指揮を執る網野監督が白鷗大学の監督に就任したのは4年前、今の4年生たちが入学した年だ。「当時はリクルートに行っても保護者の方の多くは白鷗大学の名前もご存知なかった。自分のことやチームのことを知っていただけるよう丁寧にお話して、そこからのスタートでした」という。選手たちの経歴を見れば、東海大学や筑波大学といったいわゆる強豪校のそれに比べて経験値でやや劣るのは否めない。だが、網野監督は「2年後、3年後はわからない」と考えていた。「たとえば、入ってすぐの新人戦は選手のキャリアがそのまま出るので、正直優勝は難しい。でも、個々が成長してチームとしてのポテンシャルを上げていけば必ず戦えるチームになる。2年後、3年後にどこまで追いつけるか、追い越せるかを目標にして頑張ろうと選手たちに言い続けてきました」。インカレの成績を振り返れば、一昨年は4位、昨年は3位と順位を上げ、今年のリーグ戦は東海大学、日本大学に次ぐ3位につけた。手ごたえは十分だったに違いない。それだけに網野監督は選手の気の緩みを見逃さず、その都度厳しい言葉を投げかけてきた。
「今回のインカレで言えば2回戦の名古屋学院大学との試合ですね。前半を見ていてうちの選手たちに傲慢なところがあると感じました。ハーフタイムで真っ先に触れたのはそのこと。もし、自分たちが負けたいのであれば後半もああいうプレーを続けなさいと言いました」
その結果、後半はチームのムードがガラッと変わった。何が悪かったのかを考える。足りなかったものを理解する。細かいことは言わなくても選手たちはコート上で自分たちのバスケットをしっかり修正できるようになっていた。勝利した準々決勝の日本体育大学戦は77-67。準決勝の筑波大学戦は62-51と、ともに二桁差をつけての勝利だったが、内容的には一瞬の気も抜けないタフな戦いだった。苦しいときも我慢して、我慢して、自分たちのプレーを見失わないこと。「相手がどこであれ、うちが勝つために自分たちがやり続けなければならないことを選手たちはわかっていたと思います」。言わば、それが4年間培ってきたものの成果。今年のチームが築いた最大のストロングポイントだったかもしれない。今も心に残るのは優勝後の記者会見で小室昂大が語った言葉だ。
「今日の試合では自分らしいプレーができなくて苦しいところがあったんですが、そのたびに同学年だけじゃなく、下級生からもここを頑張れ、前を向けという言葉が聞こえました。もし今日優勝できなかったとしても、最高の仲間たちとプレーできたことは自分にとって最高の時間でした。白鷗は最高のチームだと堂々と胸を張って言えます」