「ケガを理由にはしたくなかった」と佐々木優一監督が明かすように、専修大学は満身創痍だった。
関東大学リーグ戦を終えたあと、#10 喜志永修斗はヒザを故障し、長期戦線離脱を余儀なくされる。#23 キング開と#13 クベマ ジョセフ スティーブは練習試合で捻挫をし、インカレ(第73回全日本大学バスケットボール選手権大会)開幕直前まで練習もままならなかった。スティーブに至っては、初戦の徳山大学を温存。その試合で#46 寺澤大夢は「鼻の骨がおそらく折れている」状態のまま戦い抜いた。
佐々木監督は「ディフェンス・リバウンド・チーム」の3本柱をコートに掲げ、徹底させ続けてきた。この4年間で2度の決勝進出を果たしたのもその成果と言える。ケガ人を抱える厳しい状況ながらベスト4まで勝ち進み、最後まで緊迫した試合ができたのも3本柱を全うした証拠である。
準決勝は終始、東海大学がリードするゲーム展開だった。第4クォーター開始早々に失点し、44-60と16点のビハインドを背負う。「オフェンスがうまくいかない時間帯は絶対にあるが、そこに対してディフェンスでどれだけ我慢できるか」という佐々木監督の言葉を信じ、諦めることなくディフェンスでプレッシャーをかける。その先頭を切ってチームのあるべき姿を体現し、オフェンスでは起点となって少しずつ得点を返すキャプテンのキングがプレーでも、言葉でもチームを鼓舞する。しかし、反撃ののろしを上げた直後、右足首を捻ったキングがうずくまる。抱えられながらコートを去ったが、インカレ前に捻挫したときよりも「痛くなかった。ここで下がったらカッコ悪い」とすぐさまコートに復帰。チームの士気がさらに高まっていった。
残り1分13秒、#44 米山ジャバ偉生が2本のフリースローをきっちり沈め、70-74。16点差から4点差まで縮める。しかし、あと2本が遠かった。「ブザーが鳴るまではディフェンスをやり続けよう」と佐々木監督は告げ、この試合に臨んだ。#1 山本翔太は、「チームとして40分間ディフェンスを徹底できていたからこそ、離されてもガマンしてしっかりついていけたと思います。良いチームになりました」と自信を見せる。「チーム全員の力がコート上で表現でき、最後まで諦めない姿を見せることができました」とキングが言うように、試合が終わったあとは温かい拍手に会場が包まれた。71-79で敗れはしたが、東海大学と対等な激しいディフェンスを見せた専修大学も強かった。
ラストゲームとなる3位決定戦は、筑波大学と対戦。日本一を目指してきた両チームだけに、複雑な思いで臨まねばならない。気持ちを切り替え、最後に笑って終わるために全力を尽くす選手たちだが、心と体の疲労が痛々しいほど見て取れた。「喜志永やスティーブの分まで、4年生が引っ張っていかなければいけないという気持ちは強かったです」とキングは奮起し、無念のケガで出場できない2人のために戦う専修大学が前半はペースを握る。しかし後半、筑波大学はベンチメンバーが勢いに乗せ、第3クォーター残り3分には#34 三谷桂司朗のフリースローで逆転する。最後は#13 二上耀や#23 半澤凌太、#75 井上宗一郎ら4年生の力で筑波大学が圧倒した。専修大学も最後まで対抗したが及ばず、58-69で敗れ、4位に終わった。