熱戦続きだったインカレ(第73回全日本大学バスケットボール選手権大会)が終わった翌日、早くもBリーグでプレーする選手が発表された。昨シーズンの西地区最下位から大型補強し、現在5位(12月12日現在)に躍進する広島ドラゴンフライズ。インカレ得点王となった佐土原遼(東海大学)は昨シーズンも広島で活躍し、今シーズンよりプロ契約を結んだ。関東大学1部リーグ得点2位の渡部琉(中央大学3年)と中村拓人(大東文化大学3年)が特別指定選手として、有望な大学生たちを迎える。
インカレ準々決勝で、優勝した白鷗大学に67-77で敗れた日本体育大学のキャプテン井手拓実は、悔し涙を拭いながら「次のステージでがんばっていきたい」と力を込めていた。兄・優希は、同じく福岡第一高校から日本体育大学を経た土居光とともに、B3山口ペイトリオッツで活躍している。B1でプレーする機会を得られていない先輩たちという現実がある中、インカレでは平均20点を挙げたチームを引っ張った井手拓実の次のステージが気になっていた。この度、広島とプロ契約し、大学時代のライバルとともにB1でプレーするチャンスを得たことが喜ばしい。
日本一となった強固なディフェンスを誇る白鷗大学を相手に、自ら突破口を切り拓き、26点を挙げた。残り2分を切り、10点差をつけられても、諦めることなくゴールに向かっていった心境について、井手はこのように語る。
「正直、残り時間が少ない中で、自分が攻めなければ逆転もできないだろうし、そこで自分があきらめてしまったら、来年にも悪い影響が及ぶかなと思いました。最後まであきらめずに走り続ける日体大のバスケットをしようと思って、プレーしていました」
その姿は、日本体育大学のシンボルである獅子の如く、チームを奮い立たせる。2年生の小川麻斗も、井手と同じく強気なプレーで得点を挙げ、そのスタイルは継承された。
「身長が低くてもディフェンスをして走れば、日本一を狙えることを後輩たちも実感できたと思います。今年よりも、もっともっと自分たちの強みを磨いて、来年こそ日本一になって欲しいです」
日本体育大学の主力となる4年生は、井手とともに高校時代から一緒に戦ってきた「家族のような存在」という#50 バム ジョナサンだけ。それ以外は3年生以下のチームだからこそ、「来年は期待できます。古橋(正義)と青木(遥平)を中心に良いチームを作っていって欲しいです」という井手から後輩たちへバトンは渡された。
来年の日本体育大学も楽しみだが、それ以上にこれからはじまる広島での井手の活躍が待ち遠しい。ポイントガードには、日本代表となった寺嶋良や川崎ブレイブサンダースから移籍した青木保憲らがおり、中村拓人ともライバルとなる。プロとして切磋琢磨し、チームの歯車となりながらも、井手らしい強気なプレーで広島をプレーオフ圏内へと導いてもらいたい。
インカレでは連覇ならず、悔しい結果に終わった佐土原だったが、「大学レベルでもまだまだなのに、これからBリーグでプレーするので、日々の鍛錬や努力をしなければいけない」と前を向いていた。井手とともに、悔しさを跳ね返すルーキーイヤーが楽しみである。
文・写真 泉誠一