B2・アースフレンズ東京ZとWリーグ・東京羽田ヴィッキーズのホームアリーナである大田区総合体育館。プロレスなど他競技でもよく使用される体育館だが、近年では日本代表の国際試合も開催され、カレッジバスケの会場としても使われるなど、多くのバスケファンにとって馴染みのある体育館でもある。
そして今年も、インカレ(第73回全日本大学バスケットボール選手権大会)がこの大田にやってきた。女子は全国から選りすぐられた全32大学がこの大田のコートに立つが、その中には大田に縁のある人物もいる。環太平洋大学(IPU)・中川和之監督である。
専修大時代にインカレ優勝を経験し、その後日米のチームを渡り歩いた中川監督が現役最後の約1年半を過ごしたのが東京Z。在籍期間は短かったものの、プロクラブ化初年度に在籍した渡邉拓馬(現・京都ハンナリーズGM)に匹敵する実績の持ち主であり、そのキャラクターも相まって東京Zファンには大いに親しまれた。
2017-18シーズン途中にチームを離れ、そのまま現役から退いているが、それからほどなくして環太平洋大学女子バスケットボール部の監督に就任。関東1部の大学や全国常連の強豪高校からの誘いを断り、バスケ界では決して有名ではない地方大学をコーチングキャリアの出発点に選んだのは、自身の地元・山口県と同じ中国地方であることも理由の一つだが、ゼロから強化することにやりがいを感じたというのが最大の理由だった。一昨年には早くもインカレ出場を果たし、今年は中川監督として2回目(大学自体は11回目)の出場。着々とその成果は表れている。
とはいえ、そう簡単に全国で結果を残せるほど現実は甘くない。現在は関東2部ながら過去に2度のインカレ制覇を果たしている松蔭大学に54-81と完敗し、一昨年に続いての初戦敗退で幕を閉じた。この試合を、中川監督は以下のように振り返る。
「2年前はまだチームとしてインカレに出られるレベルではなかったのかもしれないですが、今年は予選も全勝できて、日本一という目標をしっかり持って活動してきた。2年前よりも自分たちらしさは出せたのかなと思います。それでもやっぱり力のなさを痛感しましたし、これをまた次につなげていきたいと思います」
中川監督が言う「自分たちらしさ」とは、ドリブルで積極的に仕掛けること。自身が突出したハンドラーであった中川監督は、そのスキルを余すところなく選手たちに伝授。「入学当初はドリブルを突けない選手が多かった」というが、この試合ではドリブルから1対1を仕掛ける場面が多く、綺麗にディフェンスを抜き去ってシュートを決める場面も見られた。成長の証明とともに、インカレという大舞台でも確実に通用する部分があるという手応えは間違いなく得ることができた。
「何があっても『24seconds dribble mentality』だけは絶対に持ち続けようと言ってきて、相手のプレッシャーに簡単に負けてパスするのではなく、自分でハンドルしようと伝えてきましたし、1対1のドリブルワークからのフィニッシュのシーンも見ることができたので、そこに関しては良かったです。プレーヤーとしての僕は1対1とかハンドルのイメージがあると思うんですが、一番大事なのはやっぱり『正しくプレーする』ということ。ドリブルを突けることが目的ではなく、自分にアドバンテージがあるから攻める、そういうシンプルな考えで指導しています」