「これまで3位や4位になりましたが、自分たちにあとひとつ何が足りないのかと考え、網野さんや石井(悠右)アシスタントコーチともそれについて話し合いました。何が足りないかと考えたときに、個人でプレーするよりもチームで戦った方が優勝できるのではないかと思いました。今年のチームは、トーナメントからずっと個人プレーよりもチームでプレーができていました」
白鷗大学もまた『スーパースターはいないがスーパーチーム』となって、一気に頂点へと駆け抜けていった。
練習や選手に対する声がけにより越えられた優勝への一山
選手層が厚く、ディフェンスを信条とする東海大学に対し、守り勝った網野監督は「コートに送り出す選手それぞれが、ディフェンスではレベルの差がなくがんばってくれた。そこは信頼していたし、一番はチーム力として良かった」と最後までインテンシティを保ち続けた。
白鷗大学は4年をかけて選手を成長させるチームであり、網野監督がじっくり強化し、また数多いる選手を日頃から競わせている。今年ベンチに入れなかった選手が、来年のヒーローになるかもしれない。白鷗大学に来て5年目、落合嘉郎ヘッドコーチ(現仙台89ersアシスタントコーチ)から引き継ぎ、チームを指揮して4年目で日本一になった。日本代表をはじめ、選手としてトップを走ってきた網野監督は、「指導者になってバスケットの見え方がすごく変わった」という。勝利に対してコントロールできる立場となったが、昨年と一昨年は決勝まで進めなかった。ブラと同じく、あと一歩届かないもどかしさに悩み、常に考えてきた。今年のインカレで優勝し、「その一山を越えられたことは、これまで練習してきたことや声をかけた言葉などが間違っていなかったのかな。新たにアップデートしながらがんばっていきたい」と指揮官にとっても大きな自信になっている。
純粋な白鷗大学の選手たち。プロを目指している選手もいるとは思うが、素朴な風貌からBリーグで戦っているイメージがわかない。どちらかと言えば、立派に働きながら社会人リーグで活躍する姿を想像してしまう。しかし、それぞれの役割をこなし、ハードなディフェンスができる白鷗大学のプレースタイルこそ、プロに求められる素材と言える。日本一となった彼らはもうスター選手の仲間入りを果たした。今後は、自らその輝きを放ち、さらなる活躍をしていくだけだ。こちらはその光を見逃さないように、これまでと同じように目をこらしていきたい。
文・写真 泉誠一