「工藤のところに良い状態でボールが入ればいいのですが、今はそこがうまく行かずかわいそうなんですよね。ただのスペースメーカーになって、ディフェンスに張られて終わってしまっています。彼のディフェンスをはがせるようにインサイドの選手が動いて、向がペイントに行けるようになってくるともっとオフェンスも循環してくると思っています。良いイメージはできていますが、現段階では苦しんでいます」
12チーム総当たり1回戦で行われている今年のオータムリーグでは、6連敗で折り返した。幸い、コロナ禍により降格はなく、来年の1部リーグは14チームで争われる。若いチームだからこそ成功体験を必要であり、インカレ・チャレンジマッチに回ることなく2ゲーム差で追う8位以上を狙いたいところだ。試合を見れば、良いディフェンスはしている。だが、その直後にイージーミスをしたり、うまくボールがつながらなかったり、ターンオーバーが多い。「本当にもったいない」という幸嶋監督は、ファウルの多さも指摘した。大東文化大学戦では32本のフリースローを与え、190cm台の向と#30 三浦拓(2年)は4つ、工はファウルアウト。激しいディフェンスとファウルは紙一重であり、リーグ戦を通してレフェリーのジャッジを見極めながら経験値を高めている。
ひたむきさや泥臭さ、みんなで一丸となってがんばることが学生スポーツの魅力
いわゆる特待生制度がなく、リクルートではライバル校に劣る神奈川大学。しかし、今では1部に定着し、小酒部を輩出し、幸嶋監督のスカウティング能力の高さもあり、未完の大器が集まりはじめている。「逆に、我々が試されているとも思っています。長い目で見ながら、彼らの将来のためにもがんばらなければなりません。もう少し活きの良いバスケットを見せたいです」という幸嶋監督をはじめ、スタッフ陣にとっても大きなチャレンジとなる。今春、横浜駅から徒歩圏内のみなとみらいキャンパスが開校し、バスケ部の拠点もアクセスがグンと良くなった。幸嶋監督の言葉を借りれば、「今までは平塚の山の中で、リクルートした選手を平塚駅まで迎えに行き、大学に着く頃にはみんな無言になっていました」が、環境の変化はリクルートにも好影響を与えそうだ。来年は工藤、工の2枚看板が4年生になり、勝負の年を迎える。
「もちろん今シーズンも勝利を目指していますが、来年以降はおもしろくなるかな、という手応えは感じています。今の学生は戦術やスキルが大好きですが、ひたむきさや泥臭さ、みんなで一丸となってがんばることが学生スポーツの魅力だと思っています。そこを貫き、神大らしさを見せて上を目指します!」
最後に、小酒部の近況に話題を向けると、幸嶋監督はうれしそうにトーンが上がった。
「必ず試合は見ていますが、本当にうまくなっていますね。やっぱり良い環境に行けば、あれほどうまくなるんだと感じています。アイツはモノが良いので、良い環境に行けば絶対にうまくなることは分かっていました。今後が楽しみですし、神大も負けずにがんばります」
文・写真 泉誠一