伸びしろしかない原石磨きは「指導していても楽しいです」
神奈川大学が史上初となる1部昇格を決めたのが4年前、アルバルク東京で活躍中の小酒部泰暉が1年生のときだった。当時のロスターを見ると、2年生の原大樹が一番大きい189cm。身長が伸びていた小酒部泰暉は、今と変わらぬ187cmに成長を遂げる。関東大学2部リーグから昇格したばかりの神奈川大学に、190cm台の選手は皆無だった。
「あの頃のインサイドは、工藤(貴哉/3年)のお兄ちゃん(工藤卓哉:当時3年)が183cmくらい(※185cm登録)でしたからね。その当時と比べたら、指導していても楽しいです」と幸嶋謙二監督が言うように、関東大学1部リーグにふさわしい身長ある選手が揃ってきた。
関東大学オータムリーグのプログラムに掲載されたメンバーは44人。4年前はゼロだった190cm台の選手が、今ではなんと10人もいる。しかし、そのほとんどが小酒部同様に高校までは無名の選手たち。また、3年生の#11 工陸都以外は、あどけない表情の下級生である。「5分でもコートに立っているだけで経験を積むことができます」という幸嶋監督は強度の高いリーグ戦に放り込み、伸びしろしかない原石たちを磨いている。
“小酒部二世” のような未完の大器は、まだ見つかっていないとのこと。だが、期待値の高い選手は少なくない。1年生の#21 阿部千寛(194cm)は「都立の無名高校出身(美原高校)ですけど、コートに立っているだけで本当に良い経験ができています。どんなときでも手を抜かず、何ごとにも一生懸命。神大を象徴するプレーヤーです」と期待し、ミスを許容しながら育てている。もう一人、#25 向奏瑠(2年)は190cmのパワーフォワードだ。コロナ禍により、一番集中して強化できる夏休み期間に練習ができなかった。幸嶋監督の計画では、「向を3番(スモールフォワード)にポジションアップさせ、リーグ戦で使えるように本当は準備したかったです」と言い、今後がさらに楽しみである。
苦しみながらもポジションアップにチャレンジ
神奈川大学時代の小酒部は、前述のとおりチーム内では大きい選手だった。しかし、インサイドに固執することなく、オールラウンドにのびのびとプレーさせたことでその能力を開花させた。190cm台は増えたが、必然的にセンターを本職にしてきた選手も多い。幸嶋監督はじっくり時間をかけながらポジションアップに取り組み、小酒部同様にオールラウンダーとして育成している最中だ。「選手自身も苦しんでいます。やっても良いミスと、ゲーム中にやってはいけない簡単なミスを練習中からかいつまんでいきながら、どんどんチャレンジさせています」という方針でシュートエリアを広げたり、ドライブに行ったり、少しずつできるプレーを増やしている。もちろん神奈川大学の中ではビッグマンであり、大きなライバルたちを相手にインサイドで体を張るプレーも厭わない。
187cmと小酒部と同じ身長の#34 工藤貴哉(3年)はスモールフォワードだが、ガードへコンバートしてもおもしろそうだ。幸嶋監督もそのイメージはできているが、チームとしてまだ噛み合わないもどかしい部分があった。