関東5位の日本体育大学が次々と3Pシュートを沈め、15-5と好スタートを切った。対する関西1位の近畿大学は、関西リーグMVPのカロンジ・パトリックとキャプテンの榎戸拓真が早々に2つのファウルを犯し、ベンチに下がらざるを得ない状況となる。それでも気持ちを切らすことなく、ベンチメンバーがつないでいく。第2クォーター中盤、1年生の高原伊吹が相手のビッグマンであるバム・ジョナサンをブロックで阻止する。その後のオフェンスでは得点を挙げ、22-22と近畿大学が同点に追いついた。対する日本体育大学も土居光、ディクソン・ジュニアの4年生がきっちり3Pシュートを決め、30-24と6点リードされて前半が終わる。
「関東のチームを越えられていない部分が関西全体としてあり、そこは越えないといけないと思っていました」と榎田が言うように、後半は関西No.1の意地を見せる。平尾剣弥の3Pシュートから第3クォーターがスタートし、27-30と近畿大学が3点差に迫る。1ゴール差のせめぎ合いが続くも、なかなか追いつけない。逆に第4クォーター開始直後、日本体育大学に連続得点を許し、46-54と8点差に引き離されてしまった。
気持ちで引かなかった近畿大学がファウルをもらい、フリースローでじわりじわりと点差を詰める。日本体育大学が5つ目のチームファウルを取られたことで、近畿大学に追い風が吹く。残り5分、2年生の米澤協平が値千金の3Pシュートを決め、57-56とついにリードを奪った。
近畿大学のファウルトラブルでスタートしたこの一戦だったが、終盤は日本体育大学がファウルで苦しむ。残り2分、日本体育大学はチームの要となる井手拓実がファウルアウトしたことで完全に形勢が逆転した。近畿大学はパトリックがインサイドから確実にゴールを決め、リードをキープ。日本体育大学もディクソンの3Pシュートで69-67と2点差で追いかける。近畿大学は次の攻撃を失敗し、残り15秒。逆転のチャンスを与えてしまったが、平尾が日本体育大学のボールを奪う好ディフェンスで救う。その後の2本のフリースローもしっかり沈めて71-67とし、その数秒後に勝利を告げるブザーが鳴った。
榎田の左ヒザはテーピングが巻かれており、万全な状態ではない。第3クォーターの途中、自ら交代を要求する場面もあった。だが、今年の近畿大学は層が厚く、仲間たちに任せた方が良いという判断でベンチに下がる。リセットした時間が功を奏し、勝負を決める時間帯はコート上でキャプテンシーを発揮し、勝利に導くことができた。
関東勢以外がベスト8進出を決めたのは、2017年の中京大学以来である。その中京大学は60-66で惜敗したが、昨年のチャンピオンである筑波大学を粘り強いディフェンスで最後の最後まで苦しめた。3年生中心のチームなので、来年が楽しみである。
近畿大学がインカレへ向けて掲げた目標は、「最低でもベスト4」と榎田は言う。関東勢以外がベスト4に進出したのは、2011年の天理大学まで遡らねばならない。2回戦突破は単なる通過点に過ぎず、運命の準々決勝は12月11日(金)16時より関東4位の白鷗大学と対戦する。8強に入ったことで、最終日まで試合ができる権利を得た。4年生の榎田は「最後の年になるので、これから一つひとつの試合を楽しんで戦っていきたいです」とも話しており、打倒関東との戦いはまだまだ続く。
文・写真 泉誠一