運営面の課題は遠征費と試合数
部活動であれば学校が、Bユースであればプロクラブが母体となるが、WATCH&Cは青木氏自身が運営を担っている。「そこがやっぱり一番難しい部分です」と苦労は絶えない。現役時代にWATCH&Cで得た収入の全てをコーチ陣への謝礼金や運営費に回し、投資してきた。プロOBがスクールコーチなどで活躍しはじめているが、クラブまで作って運営に専念するのは希有な存在と言える。
昨年のクラブ全国大会出場時、「部活動と兼任する選手たちは部費と月謝の両方を支払っており、さらに遠征費を負担してもらうのは心苦しかったです」という青木氏は、スポンサーを募って遠征費を賄うために奔走した。また、県内のクラブ数がまだまだ少ない中、試合数を増やすためには県外へと出て行かねばならない。「遠征費が家庭にとって負担になることを考えると、積極的に(他県で行われる大会に)参加できなかったのが正直なところです。でも現状として、そこに参加しなければほとんど試合を経験することもできないです」というもどかしい課題がある。遠征費を捻出するためにも、「今は積極的にスポンサーを集めている状況です」。将来的には、クラブのトップ選手たちは無償で参加できる環境を理想に掲げていた。
「クラブの場合は月謝制だから経済力のない優秀な選手は通えないと、まわりから言われることがあります。現状はその通りかもしれませんが、これまでもトライアウトに合格した実力のある選手に対して、臨機応変に対応してきました。親の経済力で夢を絶たれるようなことだけは避けたいと思って取り組んでいます」
クラブにとって、運営面や公式戦の試合数などまだまだ課題は多い。後者に関しては、県内の他クラブと連携しながらリーグ戦の構築を目指している。「育成世代にはやはりトーナメントではなく、リーグ戦がいいと思います。同じ相手と再戦することで、コーチ陣も対策を練るなど選手と一緒に成長できる環境が作れます」と青木氏は考えており、日本全体がその方向を模索しはじめている。環境面で部活動との差がなくなれば、加速度的にクラブが発展していくはずだ。
WATCH&Cアカデミー(http://watchandc.under.jp/)
WATCH&Cアカデミー 代表・青木康平
自分と向き合い、自分で決断する育成環境
前編 https://bbspirits.com/school/c20110601/
後編 https://bbspirits.com/school/c20110701/
文 泉誠一
写真 WATCH&Cアカデミー、泉誠一