自分の意見を伝えること、絶対に自分で決断すること
プロ時代に培った経験こそ、伝えるべきことは多い。東京アパッチ時代、NBAでも活躍したボブ・ヒルヘッドコーチの言葉に感銘を受けるとともに、自らを見つめ直すきっかけとなった。
「当時、19歳のNBAを嘱望されたジェレミー・タイラー(※東京アパッチを経て、2011年のNBAドラフトでシャーロット・ホーネッツより指名される。その後にトレードされ、ゴールデンステート・ウォリアーズでプレー)がいました。彼は小さな街の出身であり、高校卒業後にイスラエル(マッカビ・ハイファBC)でプロを経験し、翌年にNBAでドラフトされる道を模索していたが結局は行けず、ボブ・ヒルの指導の下、アパッチに来ました。19歳のジェレミーは若く、チームの存在や意義などを全く理解しないまま、やりたい放題でした。チームメイトとも問題を起こすことが多かった中、1度だけボブ・ヒルが激怒したときがあります。『お前みたいな選手はアメリカにはいくらでもいる。今までコーチもチームメイトも我慢していたが、小さい街で少し優れているだけでまわりからリスペクトをされ、自分がすごい選手だと勘違いし、何をやっても許されると思っている。良いときも悪いときもチヤホヤされ、特に悪いときでも絶対に誰かが助け船を出してくれると思っている。だが、覚えておけ。そういう考えを持っているNBA選手は一人もいない』と言っていました。それは日本の選手たちも同じであり、自分自身にも当てはまる部分があると考えさせられました」
U15世代でも同じようなケースはある。「上手いと思っている選手の中には、やる気がない態度でバスケをしても評価されると思っている場合があります。ボブ・ヒルが言っていたとおり、ひとつの練習の中でも本人たちがしっかりとした目的を持っていない限りは、絶対に成長はできないです」と気付いてもらえるような指導を心がけている。ある選手は学校での素行が悪かった時期があり、「そのときはバスケ自体も調子が良くなかったです。全てはつながっています」とパフォーマンスに現れてしまうものだ。逆に、今はプレーの調子が上がったことで、学校生活が充実していると感じ取ることができる。
もうひとつWATCH&Cのポリシーとして、「親に対して絶対に遠慮をするな!自分の意見は絶対に通せ」と伝え、選手たちが自ら将来を切り開けるように背中を押している。
「本当にやりたいことがあるならば、絶対に親はサポートをしてくれる存在です。自分が向かう方向を決めるのは親ではないので、その決断は絶対に自分でしろ、と言っています。そうしなければ、『親が決めたから』など絶対に言い訳が入ってきます。でも、自分で決断したことには責任が生まれます。それに対して、どう対処するかを考えなければなりません。自律した大人を育てたいという思いがあり、そのためにも自分の意見を伝えることと、絶対に自分で決断することは常に話しています」
父兄の方々にもこのポリシーをブレることなく伝え続けたことで、円満な関係を築いている。