「数年前の対応から比べると、今日のディフェンスはインテンシティーやローテーションがしっかりと対応できていたと私自身も感じています」という佐々木監督は試合後、前向きな方向性を選手たちに伝えた。
「負けはしたけども、やってきたバスケットは東海大学にも劣っていなかった。ただ、負けた原因は確かにある。そこは謙虚に受け止めて、次につなげていこう」
最終的に88点を許してしまったディフェンスに対し、及第点は与えられない。だが、ディフェンスは気持ちが大切であり、その意識が高くなっていたことに変化が見られている。オータムカップは1位から12位まで全てを決める順位決定戦があり、敗れても試合は続く。すでにインカレ出場が決まっており、2年連続準優勝の苦汁を飲まされ続けた専修大学は勝負の年に向かう。そのためにはディフェンス力の向上とともに、4年生たちの力が必要になる。
日本一を知る双子の復活に期待
昨年のウインターカップで2連覇を成し遂げ、高校生として初のB1でプレーしたのは福岡第一高校出身の河村勇輝だ。三遠ネオフェニックスで平均12.6点の記録を残し、卒業後は東海大学に進学した。初戦となった10月10日の拓殖大学戦はテレビをはじめ、多くの注目を集めていたそうだ。2回戦、世代は異なるがともに福岡第一高校時代に日本一へと導いたポイントガード対決が実現した。
2016年のウインターカップで11年ぶり2度目の日本一に導いたのは、間違いなく双子の重冨兄弟だった。友希と周希は揃って専修大学に進学したが、思うようなプレータイムを得ることはできないまま、早くも最終学年を迎えている。今年初となった東海大学戦の先発ポイントガードは、2年生の喜志永修斗に託された。そのような状況でも腐ることなく、チームメイトに声をかけ、身振り手振りで後輩たちにアドバイスを送る姿は昨年から見られてきた。周希はオータムカップ前の練習でケガをしたようだが大事には至らず、コンディションを見ながら起用していくと佐々木監督は話している。
3学年、年上であり、福岡第一高校では一緒にプレーすることがなかった河村との対戦を楽しみにしていたのは友希だ。第2クォーターにその機会が訪れたが、「自分がイマイチなプレーだったので、そこは本当に後悔しています」といきなりスティールされてしまう。1on1では河村の方に軍配が上がったが、17-27とビハインドを背負っていた専修大学が追い上げる展開であり、「野﨑(由之)が当たっていたので打たせていこうと考えていました」と流れを呼び込む。野﨑由之の4連続3Pシュートで33-35と2点差に迫って、前半終了。しかし後半は東海大学に要所で3Pシュートを決められ、インサイドでは八村阿蓮にハッスルされ、初勝利はお預けとなった。
4年生になった友希は、キャプテンを任されている。新型コロナ感染者が出たことで落ち込むチームメイトに対し、「何ごとにも前向きにやっていかなければ誰もついて来ない」とキャプテンシーを発揮し、背中を押して迎えた初の公式戦だった。敗れはしたが、「試合ができることに感謝しています」という言葉が、普通ではない状況だったことを物語っている。友希もBリーグを目指す一人であり、「ポイントガードでも3Pシュートが必要になってくる」と技術面の向上に勤しんできた。また、試合が減ったことで、自ら映像を送るなど積極的なアピールを行っているそうだ。しかし、一番の近道は実戦で証明するしかない。2年間勝ち切れなかったインカレ決勝を乗り越えるためにも、高校時代に日本一となった勝ち方を知る重冨兄弟の復活が待たれる。
文・写真 泉誠一