ただこの試合では彼女の1対1が実に効果的だった。事前のスカウティングで早稲田大学のビッグマンはアウトサイドのディフェンスに難がある。そう見た岡田は、普段はポストアップからの攻撃がほとんどだと言うが、この日は積極的にフェイス・トゥ・フェイスからの1対1を仕掛けようと考えた。もし小さい選手にマッチアップされれば、ポストアップに切り替えよう。そんな思考が功を奏したわけである。
「高校ではチームで決められた動きをやっていたんですけど、木村先生のバスケットは選手が自分で周りを見ながら考えるプレーが多いんです。頭を使わなきゃいけないけど、やることを考えてプレーするのは楽しいです」
木村コーチをして不器用と言わしめるパワーフォワード(? シューティングガード?)の成長がそこにはあった。
こうなるともはや不思議の勝ちではなくなってくる。
むろん奇跡でもない。
愛知学泉大学に復帰して4年目の木村コーチが築いてきたバスケットが着実に根付き始めている。インカレを制した経験を持つ木村コーチからすればまだまだ「まったく物足りないよ」とボヤくだろうが、少しずつその芽が出てきているのだ。
“奇跡”ではなく、“軌跡”の上に立つ勝利。
岡田は言う。
「関東の大学は最近、留学生が増えてきています。学泉は留学生もいないし、日本人だって関東の大学に比べたら小さいほうだと思います。それでも関東の大学に勝って、留学生の存在なんて関係ない! と言えるくらい勝ちたいですね」
愛知学泉大学は今日、2年連続のファイナル進出を賭けて、白鴎大学と対戦する。
文・写真 三上太
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