アメリカ戦を見たあとは寝られなかった
「今まではカッケー(かっこいい)と思って見ていた日本代表でしたが、今年のワールドカップは、もし自分が選ばれたときにどうやって戦おうという目で見ることができました」
目を輝かせながらそう話すラシード ファラーズは、今年はじめて日本代表候補に選ばれたシンデレラボーラーだ。
バスケをはじめたのは無名の越谷西高校からであり、関東大学2部リーグに属する東洋大学では一昨年まではBチームにいたことで試合に出る機会もなかった。201cmの高さとともに、スピードとジャンプ力ある身体能力、そしてバスケに対する情熱が経験不足を補っている。
同い年の活躍を目の当たりにしたラシードは、「(八村)塁がNBAに行き、(シェーファー)アヴィ(幸樹)も日本代表に選ばれ、自分は今どこにいるんだろう」と我に返る。そんな彼らに対し、「もう憧れではなく、燃えるものしかない」とライバルとして捉えている。だからこそ、予選ラウンド最終戦のアメリカ戦を見終えたあと、「その夜は寝られなかったです」と様々な感情を抑えきれなかった。
シェーファーがコートに立ったことを喜ぶと同時に、相反する感情が沸く。「もちろんアヴィには大活躍して欲しいですが、同年代であり、高校からバスケをはじめた同じ境遇なのに、そこで負けているというのはまだまだハードワークが足りていないんだと思います。アヴィになくて自分にあるものも絶対にあると思っているので、そこをもっともっと突き詰めて、アピールして認めてもらえるようにしたいです」と悔しさを原動力に、ワールドカップ後はさらなるハードワークを課す日々を続けていた。
ワールドカップ後の記者会見で篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)と渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ)が語った課題もしっかりと受け止めている。それはラシードが代表合宿で常に言われていたことでもあった。
「(日本代表アシスタントコーチのマンドーレ)エルマンさんがディフェンスもコンタクト、オフェンスもコンタクト、常にコンタクトしろと言っていました。代表合宿ではアメリカでプレーする(テーブス)海や(渡辺)飛勇、(田中)力はいつでもコンタクトをしていたのを見て、日本でしかバスケをしてこなかった自分にとっては知らない世界でした。篠山さんや渡邊雄太さんが課題に挙げたように、今まで以上にもっとフィジカルに対して意識してプレーしないといけないと思いました」
「コンタクトを嫌がらないこと」を目標に掲げ、リーグ戦を戦っている。