あんな強気なヤツだったっけ?
U17ワールドカップメンバーである牧は、38-122で大敗を喫したがアメリカと対戦した経験の持ち主である。しかしその後は、昨年の日韓大学定期戦「李相佰盃」だけであり、国際大会から遠のいている。ワールドカップで戦うU17のチームメイトだった八村塁(ワシントン・ウィザーズ)のプレーを見て、「全然変わった」と驚かされた。
「あんな強気なヤツだったっけと思って見てました(笑)。昔は、僕の方が全然思い切りが良かったし、ある意味、あのときの方が自信がありました」
ウインターカップ2014年、吉田宗彦カメラマンの「この1枚」で振り返ることもができる。ブロックされてしまったが、追いかける福岡大学附属大濠高校の牧は八村越しにダンクを狙って行った。大学生となり、キャプテンとなった今は「慎重になりすぎていると自分でもすごく感じています。そこは乗り越えなければならない」と自分に言い聞かせるように、現状を打ち明ける。
将来のプロや日本代表を見据え、188cmのポイントガードへとポジションアップを視野に入れていたはずだ。「2年生の頃はポイントガードもしていましたが、その場面も減ってきました」。大東文化大学戦では重くなった展開を打破するためにも、「場面場面ではもっとボールを運んでも良いのかな」とあのときの志を少し思い出してくれた。
日本代表でポイントガードを担った191cmの田中大貴(アルバルク東京)を見て「本当に失礼ですが、あれ?ポイントガードいらないじゃんって思いました。塁に渡して、そこからゲームが作れていました。だから、田中大貴さんが出ているときも流れが良かったし、ディフェンスでのミスマッチもできなかった。そこはすごく感じました」と勇気をもらう。
追い求める理想とチームに求められる現実が異なる場合も少なくはない。チームスポーツである以上、役割を全うするのは当然だが、学生だからこそ将来を見据えてトライすることも大切だ。八村と一緒にふたたびコートに立つためにもやるべきことがあるのではないか、と声をかけた。
「久々に明るい未来が考えられそうです。今はチームのことばかりであり、もちろんそれを考えなければいけないのは当然です。キャプテンとして、昨年からずっとチームのことばかり考えていました。でも、こんなところでウジウジやっているわけにはいかないですよね」
箍(たが)を外し、あの時のようにガムシャラにダンクを狙う牧の復活を期待している。
文・写真 泉誠一