同じく「いやぁ、やってくれましたね」と、陸川監督が目を細めたのは#23佐土原遼の活躍だ。「初めて彼のプレーを見たのは高校(東海大付属相模原)2年のときですが、パワープレーはするは、リバウンドは取るは、点は取るはで、将来は第二のザック(バランスキー・アルバルク東京)になり得る可能性を感じました」。佐土原はアメリカの血を引くクォーター。身長こそ190cmと目立って大きいわけではないが、持ち前の強いフィジカルを生かし、長身の留学生にも当たり負けしないたくましさが光る。八村がファウルトラブルに陥った準決勝ではその穴を感じさせない働きを見せ、決勝戦でもまたチームハイの29 得点を稼いで優勝に貢献した。日ごろから「相手の長身選手をいかに抑えるか」を念頭に置いて練習に取り組み、八村との1対1に闘志を燃やす。「阿蓮は自分のライバルだと思っています。早く追いつき、追い越せるよう頑張っていきたい」ということばに元来の負けん気の強さがのぞいた。
今大会でキャプテンを任された#20伊藤領は開志国際高校時代から相手の隙を縫う果敢なドライブや絶妙なパスさばきで注目を集めた選手だ。U16、U17、U18の日本代表メンバーにも選出された実績も持つ。大学1年次はケガの影響でやや出遅れたが、「まずは自分の課題に取り組むことを優先しているので焦りはない」と言い切る。「自分は寺嶋良さんや去年の内田旦人さんというすばらしいキャプテンを見ているので、そこに自分らしさを加えたキャプテン像を目指しました」と、率先して声を出し、全員を招集してミーティングを行うなどチームのコミュニケーションを図ってきた。「冷静で、全体に目を配る優れたキャプテンぶりに驚かされました。成長しましたね」と、陸川監督。その“成長”は「1年のときはただひたすらシュートを狙っていましたが、今はピックの使い方やドライブでも周りを生かすことを考えられるようになりました」という本人のことばとも重なる。東海大の新たなリードオフマンとしてコートに立つ日もそう遠くないはずだ。
こうしたチームメイトたちの活躍は一足先にチームの主軸となった大倉と八村にも刺激を与えているだろう。今大会「自分がやるべきことに変わりはなかったですが、いつも引き上げてくれる先輩たちがいない中で(自分が)どうチームを引っ張っていけるかが課題でした」と言う大倉は、周りを生かしつつも勝負どころのシュートをきっちり決め切って存在感を示し、八村はゴール下の競り合いに一層のたくましさを見せつけた。が、ゴールデンエイジと言われる彼らが先輩たちを凌ぐ本物のゴールデンになれるか、答えが出るのはまだ少し先だ。昨年の3月に発行したバスケットボールスピリッツに掲載したルーキーの座談会で、大倉は「俺らってお互い持ってないものを持ってる気がしない?一緒にやったら絶対おもしろいチームになると思う」と、語っている。それを聞いた八村は「なんかわくわくしてきた」と、声を弾ませた。あれから1年、新人戦を勝ち取った選手たちの伸びしろはまだまだ大きい。八村だけではなく見る側の“わくわく感”もこれからさらに膨らみそうだ。
第59回関東大学バスケットボール新人戦
<大会結果>
優勝 東海大学(2年ぶり6回目)
準優勝 専修大学
3位 筑波大学
4位 日本体育大学
5位 白鷗大学
6位 日本大学
7位 青山学院大学
8位 関東学院大学
<個人賞>
新人王 松崎裕樹(東海大1年)
優秀選手賞
大倉颯太(東海大2年)
八村阿蓮(東海大2年)
井手拓実(日本体育大2年)
二上 耀(筑波大2年)
寺澤大夢(専修大2年)
得点王 井手拓実(日本体育大2年)
3P王 井手拓実(日本体育大2年)
リバウンド王 モンゾンボ クリスティン(日本体育大1年)
アシスト王 大倉颯太(東海大2年)
文 松原貴実
写真 三上太、バスケットボールスピリッツ編集部、吉田宗彦