第59回関東大学新人戦は東海大学の2年ぶり6回目の優勝で幕を閉じた。優勝までの戦いを振り返ると、準決勝の日本体育大学戦、決勝の専修大学戦ともに立ち上がりに苦しんだが、チームの生命線とも言えるディフェンスから立て直し、流れをつかんだあとは一気に勝負を決めるチーム力が際立った。新人チームとはいえ、#11大倉颯太と#86八村阿蓮はルーキーシーズンからスタメン起用された選手。他の2年生を見ても高校時代は主力として全国大会を経験した有力選手が揃い、その顔ぶれは15年前の竹内譲次(アルバルク東京)、石崎巧(琉球ゴールデンキングス)、内海慎吾(京都ハンナリーズ)ら以来の“ゴールデンエイジ”と言われるほどだ。「能力が高いチームメイトとタフな練習を一緒に頑張ることは間違いなくそれぞれのレベルアップにつながるし、それを(新人戦の)コートで表現できたと思う」と、大倉が語るように、個々の着実な成長が見て取れた今大会は日々の切磋琢磨を示すものだったと言えるだろう。
日本体育大のスタートダッシュに圧倒された準決勝で反撃のシュートを沈め、巻き返しのキーマンとなったのは#31松本礼太だ。そのシュート力は福岡第一高校時代から定評があったが、「シュートフォームに問題があって、東海に入ってから学生コーチとビデオを見ながらあれは良くない、こうした方がいいと話し合いを重ねてきました。その結果たどりついたのが今のフォームです」と言う。「あとはいかに思いっきりよく打てるかが課題でしたが、早稲田戦(3回戦)では消極的になってしまい、周りからもっと自信を持って打てと言われました。それで、準々決勝の関東学院戦は積極的にシュートを狙い、そこで感覚をつかめたことが日体大戦(チームハイの21得点)につながったような気がします」。だが、この新人戦で自分の成長を最も感じたのは?の問いに返ってきたのは「シュートよりディフェンスです」という答え。「東海ではディフェンスができないと試合に出られません。だからディフェンスのフットワークはめちゃめちゃ頑張って練習してきました。その成果は少し出せたかなあと思っています」
「ディフェンスで成長できた」と語るのは#60坂本聖芽も同じだ。中部大一高時代は点取り屋として知られたが、今大会では前から当たる激しいディフェンスで流れを呼び込む役割を全うした。「ディフェンスに対する意識が大きく変わったし、その分高校より確実に力がついてきたと思います。この大会を通して手応えを感じられたことは自信にもなりました」。その反面、オフェンスでは「まだまだ颯太や阿蓮に頼ってしまうことが多い。もっとシュートの精度を上げて得点に絡めるようにしないと」と、課題が先に口をついた。とはいえ、準決勝では大事な場面の1本も確実に沈めて14得点をマークしており、攻守で持ち味を発揮した印象は強い。陸川監督の坂本評は「日ごろの練習でも絶対手を抜かない選手」であり、その練習の成果をしっかりと出した今大会は「随所に成長を感じた」と続けた。「エースの颯太と比べても遜色のない活躍だったと思います」の一言には、さらなる飛躍を目指す坂本への期待が込められていたように思う。