しかし、引きずっていては何も始まらない。2部降格が決まり、インカレ出場も逃した後、拓大の新たなチームつくりが始まった。「2部に落ちたことは周りが思うほどダメージはなかったです。少なくとも僕は2人がいなくなったのは仕方がないことだし、その分みんなにチャンスが回ってきたとポジティブに捉えようと思いました。2部に行ったってチームの目標がなくなるわけじゃない。そこからまた這い上がればいいんだと」(平良彰吾)
池内監督が目指すのは『機動力を武器にフルコートで勝負するチーム』だ。「ドゥドゥにしても、岡田にしてもディフェンス面はまだ力不足だったから、僕がやりたいフルコートのバスケットはちょっと難しいかなと思っていました。サイズダウンした今年はフルコートでプレッシャーをかけるチームに徹します。そのためには少なくとも10人の選手を使わなくてはならない。つまり、たくさんのメンバーにチャンスがあるということです」
キャプテンの平良も「今年のチームは全員バスケットという意味で、すごく可能性を感じている」と言う。「インサイドの杉野(晴輝・3年)は194cmとそれほど大きくはないですが体を張って頑張ってくれてますし、多田(武史・4年)、小室(望海・4年)、荒川(颯・4年)といった点取り屋も揃っています。2年生ガードの(平良)陽汰もいい働きを見せているし、自分を含めて全員が同じ方を向いてチームの脚を生かせれば自分たちが目指す拓大バスケを展開できると思っています」
早稲田大を89-68で破り準々決勝に駒を進めた今大会は、専修大を相手にスタートダッシュを見せたものの「後半になると自分が、自分がというプレーが目立ち、余計なドリブルからのタフショット、落ちたボールが相手の速攻につながるという悪循環で、一気に流れを持っていかれた」(池内監督)という内容で逆転負け。が、続く東海大戦に敗れ7位―8位決定戦に回った最終日は松脇圭志(4年)、杉本天昇(3年)といったスコアラーに209cmのシェイク・ケイタ(2年)を擁する日大をプレッシャーディフェンスで抑え込み、攻めては3ポイントシュート7/10を含み29得点をマークした多田を筆頭に高確率のアウトサイドシュートで圧倒した。
「7位という成績でしたが、最後に自分たちのバスケが出せて終わったのは良かった」と、池内監督。平良もまた「これから2部で戦うわけですが、2部と言っても留学生も多いし簡単には勝てないと覚悟しています。そこで揉まれて優勝することが目標。それを目指す意味でも今日の日大戦はいい経験になりました」と、笑顔を見せた。その平良には“好きな言葉”がある。「問題が起こったとしても、それで人生が変わるのは2割。あとの8割はその問題に対して自分がどう対応するかだという言葉です。つまり何か大きな問題があっても、8割は自分自身で変えられるってことです。今年のうちのチームも同じ。いろいろ大変なことはあったけど、それを自分たちでいい方向に変えていきたい。新しい拓大として戦う今シーズンを楽しみにしています」――
文 松原貴実
写真 バスケットボールスピリッツ編集部