若いころは常に“中心”が好きだった。たとえば幼いころに見ていた特撮戦隊モノは赤(レッド)が好きだったし、野球だとエースだとか、4番バッターにあこがれた。バスケットを始めた頃も、周りが騒いでいたマイケル・ジョーダンには食いつかなかったものの、カール・マローンやクリス・マリンといった得点を取るプレーヤーが好きだった。
しかし年齢を重ねて、少しバスケットのことがわかったような気に――「わかった」わけではなく、あくまでもわかったような気になってくると、見る視点も変わってくる。スコアラーや司令塔もさることながら、地道にリバウンドを重ねたり、スペースを作ったり、一方で空いているスペースにタイミングよく飛び込むような、頭と体を使える選手につい目を奪われるのだ。
“令和”初にして、通算32回目となる能代カップ(「第32回能代カップ高校選抜バスケットボール大会」)にも、そんな選手がいた。
開志国際高校の板澤明日起である。
身長183センチ。登録ポジションはスモールフォワードだが、実質的にはパワーフォワードの働きをしている。ディフェンスリバウンドこそ202センチのセンター、ジョフ・ユセフが担うことのほうが多いが、そのこぼれ球にいち早く反応するのはたいてい板澤だ。体を張ったディフェンスをしたかと思えば、相手の盲点をつくスティールも絶妙だ。
オフェンスでもその動きに目を奪われる。ユセフがダブルチーム、トリプルチームを受けると見るやタイミングよくゴール下に飛び込み、地味に得点とリバウンドを稼いでいく。ユセフやエースガードの高木拓海、2年生エースのジョーンズ大翔らに目が行きがちな今年の開志国際にあって、勝敗のカギを握る“キーマン”は、実は板澤ではないかと考えてしまうほどだ。
「ジョーンズとかユセフとか、オフェンスは2~3人の得点を取れる選手がいれば何とかなるんですけど、ディフェンスは5人全員がやらなければいけないし、そういう5人全員がやらなければいけないことを頑張って、ディフェンスとかリバウンドとか、プレーを見てもらえればわかると思うんですけど、気持ちでは誰にも負けないようにしています」