過去12回の優勝を数える男子・日本大学、旧・安城学園女子短期大学時代に6連覇(1960〜65年)を成し遂げた女子・愛知学泉大学は18回の優勝回数を誇る。今年のインカレでは優勝にこそ届かなかったが、日本大学は前回優勝以来となる9年ぶりにベスト4進出を果たし、愛知学泉大学も8年ぶりに決勝へ駒を進め、古豪復活の狼煙を上げた。
『流れの読み方などまだまだ勉強不足』城間修平ヘッドコーチ
日本大学OBでもある城間修平ヘッドコーチはまだ2年目、35歳の若き指揮官である。高松ファイブアローズを最後に2008年、現役を引退した。その翌年、日本大学のアシスタントコーチに就任した年が、最後に日本一になったときだった。当時のキャプテンだった栗原貴宏選手(栃木ブレックス)をはじめ、上江田勇樹選手(新潟アルビレックスBB)、篠山竜青選手(川崎ブレイブサンダース)らBリーグで活躍する選手も多い。
昨年のインカレは2回戦(ベスト16)で敗退している。この1年間で大きく前進した要因について、城間ヘッドコーチは「能力の高い選手が多く、また身長が大きな選手もおり、彼らをどう生かしていくかをまず考えています。ここでシュートを打ちたいなど、それぞれの思いや考えがありますが、まずはお互いに話し合いながらみんなでチームとしてバスケットをするように心がけるようにしました」。素材を生かしながら調和させたことが躍進につながった。
ベスト4進出により、「選手たちはひとつずつ勝ち上がりながら自信を持てたことが本当に良かったです」とこの経験が財産になった。それは若き指揮官にとっても同じである。
「本当にこの経験は大きく、私自身もベスト4までいろいろ指揮を執っていく中で流れの読み方などまだまだ勉強不足な部分がありました。でも、得るものも非常に大きかったので、来年に向けて生かしていきたいです」
タレントが揃う日本大学だが、順風満帆とは行かず「良いときもあれば悪いときもあり、波があるチームです。その波を少しでも減らしていき、今大会以上の成績を目指して練習からしっかり積み重ねていきたいです」という城間ヘッドコーチは、一歩一歩実直にチームを前進させている。
一時代を築いた名将だが『昔を振り返っている暇はない』木村功監督
Wリーグ(デンソーアイリス、シャンソン化粧品シャンソンVマジック)でのヘッドコーチ業を経て、3年前の2016年より15年ぶりに愛知学泉大学に木村功監督が戻ってきた。1981〜2001年に率いていたときには5連覇(1996〜2000年)、4連覇(1991〜1994年)を含む、11回日本一へ導いている。復帰3年目で決勝に導いたその手腕は健在だ。
木村監督自身にとって、日本一を懸けた決勝戦は「18年前?前に辞めたときからもうそんなに経っちゃったんだぁ」と驚いていた。常に優勝争いをしていた当時と今の大学女子バスケの違いを聞けば、「僕には分からない」と即答する。しかし一拍おき、違う点として留学生が台頭してきたことを最初に挙げた。続けて、「女子大学生が身体を張って戦う姿は昔も今も変わらない」と目を細める。
3年ぶりのベスト4の戦いを終え、「ファイナル、セミファイナルは大学生たちの意地が見えた。このステージを経験しなければわからないこと」である。先発メンバーの平野実月選手(2年)と髙橋華菜選手(3年)、ベンチスタートながら16点を挙げた岡田真那美選手(2年)など有望な戦力が来年も残る。決勝の舞台を経験した3年生以下の選手が7人いたことも大きい。
かつて、輝かしい栄光を築いてきた木村監督だが、「昔を振り返っている暇はない」と断言する。
「昔を振り返ると、あの時の選手はこうだったと言いがちになってしまうので、前だけを向いて行こうかなと思ってます」
古豪復活にワクワクさせられたインカレは終わった。今回紹介した両校は最多優勝回数2位であり、第1位は男女とも日本体育大学(男子14回/女子19回)である。来年、女子は残念ながら関東大学女子リーグ2部Aブロックへ降格した。一方、男子は7年ぶりに1部昇格を決めている。今回紹介した2校と同じく、古豪復活に期待したい。
全日本バスケットボール連盟
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文・写真 泉 誠一