インカレ女子トーナメントは東京医療保健大学が制し、2連覇を達成して幕を閉じた。1回戦vs広島大学は146-55、2回戦vs名古屋経済大学も106-51で圧倒する。しかし、その後は苦戦が続く。準々決勝vs拓殖大学は85-79、準決勝vs白鷗大学はさらに僅差の80-77、そして決勝vs愛知学泉大学は何度も追い上げられる中、85-76で振り切り、苦しみながらも優勝までこぎ着けた。
勝負には厳しさと強さが必要である
振り返れば、東京医療保健大学にとっては苦しい1年だった。春、新シーズンがはじまった直後にポイントガード#14岡田英里選手(3年)が手を骨折し、長期離脱を余儀なくされる。直後に迎えた関東大学女子トーナメントは優勝した筑波大学に準々決勝で敗れ、不完全燃焼のまま5位に終わった。1〜2年生が出場した新人戦は優勝を飾り、夏を乗り越え勢いをつけて秋のリーグ戦に突入する。3連勝した後の松蔭大学戦で早くも初黒星を喫し、さらに#18藤本愛妃選手が足を負傷し、インサイドの要を欠く事態に陥った。10月13日、専修大学戦で岡田選手が復帰したが、その週は2連敗に終わる。
連敗後、恩塚亨ヘッドコーチは「負けたから厳しい練習をするのではなく、勝負には厳しさと強さが必要である」ことをあらためて強調する。続く白鷗大学には2連勝したが、優勝した早稲田大学とは1勝1敗、結果は9勝5敗で3位だった。求める結果は得られなかったが、前を向いて戦ったことでチームは本来の姿を取り戻していく。
ケガをした二人こそ、インカレに懸ける思いは誰よりも強い。「ケガをしていたときに、みんなが悔しい思いをしているのを見ていたからこそ、インカレで絶対に優勝したい」と岡田選手が言えば、藤本選手も「絶対に戻って、キャプテンのためにがんばろうという気持ちがあったからこそ、リハビリをがんばることもできました」と苦しむチーム事情をモチベーションに変えて、間に合わせてきた。
女子日本代表活動により恩塚ヘッドコーチ不在の期間が長く、その間は映像を共有しながら玉城耕二アシスタントコーチをはじめ、優秀なスタッフ陣がその穴を埋める。FIBA女子ワールドカップを終えて帰国し、すぐさま指揮官として復帰したが体調が優れず「感覚的なズレが生じ、良いコーチングができないときもありました」。ケガ人が多く、チーム全体が弱気になったことで「練習の強度も落ちてしまいました。それが勝負の最後のところで気持ちの強さが出せずにリーグ戦で苦しいゲームをしてしまった」原因でもあった。
もう一度、言い訳することなく厳しい環境に身を投じ、自信を取り戻さねばならない。練習は嘘をつかない。唯一の4年生としてコートに立つ#4若原愛美キャプテンが声をかけ、チームを引っ張ったことで再び戦う集団となってインカレに戻ってきた。藤本選手が復帰したことで、「今シーズン全員が揃って戦う最初で最後の大会に向けて、みんなが熱い気持ちで臨んでくれました」(恩塚ヘッドコーチ)。
連覇したのは15年ぶり!群雄割拠な大学女子バスケ界
「コートの中では選手同士が声を掛け合い、みんなでしっかり目を合わせてプレーしたからこそ、きつい時間帯や苦しい時間帯もみんなで乗り越えることができました」と#13平末明日香選手(3年)が、インカレを制した勝因を挙げる。苦しい時期を乗り越え、チーム力で上回った東京医療保健大学が2連覇を成し遂げた。
敗れた愛知学泉大学の木村功ヘッドコーチは「紙一重」という言葉で、今の大学女子バスケの状況を明確に語る。
「今大会も第1シードの早稲田大学が負け、東京医療保健大学も一桁差の僅差のゲームを勝ち上がってきた。本当に紙一重であり、我々が2回戦で敗退する可能性もあった。ここ数年では、はじめての連覇であり毎年のように優勝チームが変わっている。それくらい今は群雄割拠だ」
東京医療保健大学の前に連覇を果たしたのは15年前の日本体育大学(3連覇)まで遡らねばならない。木村ヘッドコーチ率いる愛知学泉大学が5連覇を果たしたのは18年も前の話になる。
来年を見据えれば、平末選手、岡田選手、藤本選手、そしてMVPを受賞した#32永田萌絵選手と先発を担う3年生たちがそのまま戦力として残り、期待は高い。さらに、180cmの#5パレイ ノリコ選手やポイントガードの#12木村亜美選手、シューターの#7安藤舞華選手といった1年生が台頭してきたのはケガの功名と言えよう。毎年のように新たな戦力が頭角を現す恩塚ヘッドコーチの手腕とリクルートも見逃せない。
「絶対に3連覇してくれると思っています。期待していてください」と若原キャプテンは後輩たちのさらなる躍進を確信していた。群雄割拠の大学女子バスケ界か、はたまた東京医療保健大学の時代が到来となるか!? 今から来年が楽しみである。
全日本バスケットボール連盟
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文・写真 泉 誠一