第70回記念大会のインカレ2018はクライマックスを迎え、本日12月15日(土)15:30より女子決勝戦が大田区総合体育館で行われる。この試合の模様はBSフジ、J SPORTS、バスケットLIVEでそれぞれ生中継される。決勝へ駒を進めたのはディフェンディングチャンピオンの東京医療保健大学と、過去18回の優勝を誇る古豪・愛知学泉大学が18年ぶりの日本一を狙う。
女子準決勝はいずれも譲らないディフェンシブな戦いだった。ファウルトラブルに見舞われ、この後にコメントで登場する勝利チームの二人はいずれもファウルアウトしたほど激しいぶつかり合いを繰り広げる。プレッシャーがかかる中でも精度の高いシュートを決め、最後に上回ったのが東京医療保健大学と愛知学泉大学だ。敗れた白鷗大学も筑波大学も紙一重であり、両校による3位決定戦も素晴らしい試合になるだろう。
『リーグできつかった経験があったからこそ、今その強さが出せている』東京医療保健大学#32永田萌絵選手
東京医療保健大学vs白鷗大学は昨年の準決勝と同じ組合せであり、結果もまた同じだった。77-80で敗れた白鷗大学の佐藤智信ヘッドコーチは、「もう少しだったのですが最後のワンプレーに象徴されるように、残りあと1〜2秒ガマンできればなんとかなるところをやられてしまったケースがありました」とディフェンスの差を敗因として挙げた。
最後のワンプレーとは残り31.7秒、白鷗大学#9上田祐季選手がバスケットカウントを決め、77-78と1点差に詰める。次のディフェンスを成功させれば、もう一回チャンスはやってくる。しかし、ショットクロックぎりぎりで#13平末明日香選手に決められ、守り切れなかった。
東京医療保健大学は、「ディフェンスから先手を取って40分間戦って行こう」と選手同士が声を掛け合って試合に臨む。18点を挙げた#32永田萌絵選手は、「ディフェンスをがんばってリバウンドを全員で獲れた」ことを勝因に挙げ、粘り勝つことができた。
リーグ戦中はケガ人も多く、厳しい戦いを強いられたことで2位の白鷗大学より順位は下の3位での出場となった。しかしインカレにはケガをしていた選手たちも復帰し、さらにリーグ戦を通じて成長した下級生たちが目覚ましい活躍を見せている。「リーグできつかった経験があったからこそ、今その強さが出せているんだと思います」と厚みを増したチーム力で2連覇を目指す。
「最後は気持ちの勝負だと思いますし、自分たちはどのチームよりも努力してきました。その強さで勝ちたいです」
『インカレは関東のチームだけのものではない』愛知学泉大学#5アイメレク モニィーク選手
62-79で敗れた筑波大学の柏倉秀徳ヘッドコーチは、愛知学泉大学との差を2つ感じていた。一つ目は「ボールに対する執着心」、もう一つは「フリースロー」である。小さいチームだからこそ、ルーズボールを追うことを徹底させていたのは筑波大学も同じである。だが、球際の強さは愛知学泉大学に上回れ、その差が勝敗を分けた。フリースローに関しては、21本中10本と5割以下の確率では勝機をつかむことは難しい。第3クォーターに43-47と追い上げる場面に3度もらったフリースローは2/6本しか決められなかった。愛知学泉大学の得点も止まっていただけに、「全て決めていれば同点になってました」と柏倉ヘッドコーチも悔やむ。フリースロー1本、ひとつのプレーの大切さと恐さが身にしみる結果となってしまった。
勝った愛知学泉大学は気持ちの面でも負けていなかった。#5アイメレク モニィーク選手は、「医療(東京医療保健大学)以外の関東勢には負けない」と自信を持って臨んでいる。しかし、インカレ直前までは不安しかなかった。個々の能力では適わないからこそチームで守ることをテーマに掲げていたが、なかなかうまく噛み合わない。皇后杯2次ラウンドでは滋賀銀行に80-81で守り切れずに敗れ、課題を抱えたままインカレがはじまってしまった。
初戦の福岡教育大学を109-54、続く日本経済大学も81-56で下し、いずれも50点台に抑えたことで、一気に好転する。「勝ち上がるにつれてチームでバスケットができるようになり、それが苦しい時間帯でも勝ちにつなげることができるようになっています」とモニィーク選手が言うように、ディフェンスのチームとしての自信を取り戻した。今のチームの好調さは、試合中に見せるモニィーク選手の笑顔が全てを物語っている。
「1年のときからずっと試合に出させてもらい、インカレも今年で4年目です。でも、これまでの3年間は何もできませんでした。4年生の意地や最後の大会に懸ける思いもありますが、それ以上に今は楽しい。1年生のときの4年生がすごく逞しくて、『そんな4年生になる』と目標を決めて取り組んできました。悪いときでも笑顔で声をかけることだけは意識しています」
1年次は先輩たちとともに準決勝に進んだが白鷗大学に敗れ、3位決定戦でも大阪人間科学大学に敗れて4位に終わった。3年ぶりに4強入りした今年は、準決勝を乗り越えて決勝進出を決めた。「インカレは関東のチームだけのものではない」という反骨心を持っている。18年前に愛知学泉大学が5連覇して以来、関東勢以外が優勝したのは大阪体育大学の2度だけという結果に一石を投じたい。
「関東が強豪同士で競い合ってるから強いと言われますが、しっかり練習をしてきたチームが一番強いということをコートで示したいです」
東京医療保健大学と愛知学泉大学は3週間ほど前に練習試合を行っていたそうだ。お互いが探り合いながらの2試合はいずれも5点差であり、結果は1勝1敗に終わっている。互いに厳しい練習をしてきたことを自信に持ち、優勝をたぐり寄せるためにも気持ちで負けられない。白黒ハッキリさせる3度目の戦いがはじまる。
文・写真 泉 誠一