駒が揃わず3位に終わったリーグ戦
インカレ(第70回全日本大学バスケットボール選手権記念大会)の組合せが決まった。昨年の女子インカレを制し、初の日本一になった東京医療保健大学は第3シードに収まる。8つ角にいるシード校が順当に勝ち進めば、準々決勝で拓殖大学、準決勝では白鷗大学と専修大学の勝者と対戦する。白鷗大学以外、リーグ戦では黒星を喫しており、専修大学には一度も勝てなかった。関東大学リーグ戦は9勝5敗で3位だったが、戦うための駒が揃っていなかったのが原因でもある。
リーグ前半戦は、同時期にFIBA女子ワールドカップが行われていたため、女子日本代表に帯同していた恩塚亨ヘッドコーチが不在だった。戻ってきたのは開幕から1ヶ月後、10月6日の拓殖大学戦から。しかし、入れ替わるように9月9日の松蔭大学戦まで平均21点を挙げていたポイントゲッター#18藤本愛妃選手(3年)がケガで離脱してしまう。もう一人、今春から長い間、東京医療保健大学は司令塔もいなかった。
「4月頃、練習試合で右手首を骨折。すぐに手術したのですが思っていたよりも長引き、リハビリ期間も長かったです」というのは#14岡田英里選手(3年)である。ヘッドコーチとポイントガードがおらず、さらにポイントゲッターを失いながらも3位でリーグ戦を終えたことを褒めたい。岡田選手は10月13日の専修大学戦から、指揮官が思っていたよりも早く復帰できたのは朗報だった。
「またチームと一緒に戦えるようになり、少しでも貢献できるようになったことはうれしいです。でも、自分の力もまだ不十分。インカレまで時間があるので、そこに向かって調子を上げていかなければなりません」
まだまだ本調子ではなく、現在進行形で本来の姿を取り戻している最中だ。リーグ戦はケガ人がいたことで、本来とは違うポジションを担わなければならない選手もおり、歯車が噛み合わなかったのも致し方ない。「みんなが気持ち良くプレーできるようにしたいですし、自分も活躍できるように心がけていきたいです」という岡田選手が戻ってきたことで、円滑にまわり始めている。
常に前向きな森田先輩を見習い、最後はみんなが活躍できるチームへ
岡田選手と藤本選手の大黒柱がいなかったことで、プラスになった点もある。1年生センター#5パレイノリコ選手は経験を積むことができ、大きな戦力となった。ポイントガードも1年生#12木村亜美選手が先発を任され、得点面でも存在感を示している。「自分がいない間にしっかりつないでがんばってくれました。今のガード陣はいろんな個性があり、それぞれが違うタイプです。下級生たちが成長してくれた分、みんなの特長を生かしながら良いゲームができはじめています」と頼もしさを感じている。インカレには藤本選手も戻ってくるようだ。駒が揃うとともに、層が厚くなった東京医療保健大学はインカレから反撃開始だ。
昨年、4年生だった森田菜奈枝さんもケガに見舞われていたが、そのときの姿を岡田選手は思い出していた。「模範的な森田さんの姿をずっと見てきたので、そこは見習っていました」と言い、常に前向きな行動を心がけていた。ケガから復帰した今は、昨年同様に「最後はみんなが活躍できるようなチームを作っていきたいです」と抱負を述べ、2連覇を目指す。
インカレといえば、1年次の岡田選手は白鷗大学に決勝で敗れ、代々木第二体育館の会議室で行われた記者会見場の一番端でずっと泣いていた。2年生になった昨年は、仙台の地で笑顔を弾かせた。さぁ、3年目。苦しいシーズンだったからこそ、最後は笑顔で終わりたい。
「4年生にとってはインカレが最後です。どのチームも強い気持ちで向かってきます。自分たちもそれに負けないように最初からエネルギーを出して戦っていくだけです」
インカレ(第70回全日本大学バスケットボール選手権記念大会)
文・写真 泉誠一