互いに無傷の3連勝同士だった白鷗大学vs日本大学。4戦目にして首位決戦となったが、85-71で連勝記録を伸ばしたのは日本大学の方だった。「今日の負け方に関しては、悔しいというよりも清々しい」と苦笑いをするしなかった白鷗大学の網野友雄監督。「何もやらずに負けた。負けるべきして負けた試合でした」と続けた。
全勝対決ゆえに気合いが入るは当然である。試合前から網野監督は気持ちで負けないことを選手たちに伝えていた。しかし、気合いのこもったディフェンスで突き放していったのは日本大学の方だった。208cmのシェイク・ケイタ選手の存在も大きいが、彼がベンチにいる時間帯こそ走って得点につなげていった。選手たちを奮い立たせようと檄を飛ばす網野監督だったが、「なかなかスイッチが入りませんでした」。
開幕戦から青山学院大学、専修大学、そして東海大学に勝利し、「なんとなく力のある大学にポンポンポンと3連勝し、少し伸びかかっていた鼻がちゃんと折られました」という網野監督の言葉どおり、選手たちはどこかに慢心があった。3年生の前田怜緒選手は、「東海大学を破って3連勝した時点で気が抜けたというか、このまま行けるのではないか、という気の緩みがこの試合には絶対にあったと思います。それが試合の入りの悪さにもつながっていました。今日の敗因はメンタルの部分です」と認めている。
試合後、「自分たちをもう一回見つめ直す良いパンチをもらった」と網野監督はプラスに捉えていた。「この敗戦がマイナスにはなっていない」とロッカールームで選手たちにも伝え、自分たちの力をあらためて信じさせる。前田選手は、「逆にスイッチが入った」と下を向くことなく気合いを込める。翌日に行われた明治大学戦は93-76で快勝した。日本大学が神奈川大学に敗れたことにより、大東文化大学とともに4勝1敗で3チームが並んでいる。今シーズンも混戦必至の関東大学リーグであり、どこが優勝するかは全くもって分からない。
『選手がメインとなって戦え』という変化に最初は戸惑った選手たち
日本大学に完敗したが、それでも開幕3連勝を挙げ、現在4勝1敗で首位タイに位置する好スタートを切ることができた。「前回までの3試合は本当に素晴らしかった」と網野監督も納得のいく戦いでもあった。「オフェンスのトランディションを速くすること」をテーマに強化し、チームに変化をもたらせている。
今シーズンより本格的に白鷗大学の指揮を獲りはじめた網野監督による変化に対し、「最初は戸惑いもあった」と前田選手は打ち明ける。
「(昨シーズンのヘッドコーチだった)落合(嘉郎)さん(現仙台89ERSアシスタントコーチ)のときは全部指示を出してくれていました。でも、網野さんになってからは『選手がメインとなって戦え』と言われています。これまではどうすれば良いか迷ったときにヘッドコーチからの指示を待っていましたが、そこが大きく変わった点です」
劣勢に立たされた日本大学戦は、コート上の選手たちはベンチに助けを求め、必要以上に網野監督が細かく指示を送っていたが、それは本来の姿ではない。前田選手も頭では理解している。
「なかなか自分たちでハドルを組んで話すこともできておらず、それが今の課題です。それができればさらに強くなれることは分かっています」
戸惑いもあったが、「このチームは僕ら3年生がメインで出ることが多いので、学年問わずリーダーシップを取っていかなければいけないと感じています」と意識を変えはじめた。
「春のトーナメントでは3位になりましたが、不安しかなかったです。網野さんと僕たちの意見が食い違い、今もたまにありますけど、そこが最初は不安でした。ここはこうした方が良いと話し合ったりすることは、昨年まではなかったことです。自分たちから意見を出し合うようになり、明日のミーティングでも今日の試合の反省点を踏まえて意見を言いますし、そういうコミュニケーションを重ねていけばさらに強くなると思います」
選手自身が反省点や改善点を出し合ったことで、翌日の明治大学戦は本来の姿を取り戻し、しっかり勝利につなげていた。
リーグ戦、インカレのいずれかでタイトルを獲るのが目標
「なにか1つ、タイトルを獲ること。このリーグ戦でもインカレでも良いのでタイトルを獲りたいです。それが彼らにとってはものすごい自信につながります。もちろんインカレの方が良いに越したことはないですが、リーグ戦でも優勝を狙える位置につけていって(タイトルを)獲れるようにしたいです」と網野監督は今シーズンの目標を定めている。
気の緩みが敗戦に直結する恐さを知った日本大学戦が、白鷗大学にとってのウェイクアップコールになった。混戦状態のリーグ戦に対し、「本当に分からない。ひとつ間違えれば入替戦に行くかもしれないですが、優勝だってできると信じています」と前田選手はさらに気を引き締め、前へと進むだけだ。リーグ戦と平行して、今週末9月15日(土)より天皇杯1次ラウンドに栃木代表として出場する。この戦いを突破することも白鷗大学の目標のひとつである。
網野監督にとって日本大学は出身校であり、2年前までヘッドコーチを務めてもいた。自らリクルートしてきた選手たちの成長に安堵している。
「心のどこかでは心配していた部分がありました。今シーズンのリーグ戦の戦い方を見ればみんながんばっているので、もう心配することもないですし、良かったなと思うところもあります。次(10月13日@専修大学生田キャンパス)は必ずリベンジします!」
関東大学バスケットボール連盟
天皇杯・皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会
文・写真 泉 誠一