2年前、2部ながら新人戦で準優勝を果たした中央大学。当時の2年生が4年生となった今シーズン、最初のスプリングトーナメント(第67回関東大学バスケットボール選手権大会)は優勝にこそ手は届かなかったが、ふたたび決勝へ進むことはできた。1部昇格を果たした今シーズン、中央大学が台風の目になりそうだ。
オフェンスを強化し、『5人全員が動いて息の合ったプレーで倒していきたい』
「僕らの代の新人戦(2016年)で決勝まで行けたことは自信につながっています。昨シーズンは2部リーグで優勝し、これから1部の相手と戦って行くためにも、試合に出る5人全員が動いて息の合ったプレーで倒していきたいと考えながら練習をしていました」(中村功平選手)
チームトップの83点(平均16.6点)を挙げ、3Pシュートは15本を成功させ1位タイの活躍を見せた中村功平選手。敢闘賞も受賞し、自信を持って今シーズンを迎えている。1部に昇格してきたばかりの中央大学だが、このスプリングトーナメントは2年前に準優勝した新人戦を思い出し、「もう一回、決勝まで行くんだ」とプライドを持って臨んでいた。決勝は筑波大学に68-99と歯が立たなかったが、目標を達成することはでき、またひとつ大きな自信を手に入れた。
「昨シーズンまでは勢いとノリで早打ちしてしまっていましたが、そこをガマンしてチームで良いシュートチャンスを作って、しっかりメイクすることを徹底させています」と荻野大祐ヘッドコーチはオフェンスを重点に強化してきた。昨シーズンのリーグ戦では、毎試合スターターを変えながら構築してきたバリエーションをベースとし、「経験を積んできた4年生が軸となり、そこに2〜3年生を混ぜながら相手を見てマッチアップを考えています」。試合経験を与えてきたことで、選手層は厚みを増している。中村選手も「僕らは小さいですが、スピードや1on1などの個人技では勝てる」という強みができ、しっかりと結果に結びつけていた。
オフェンス強化の裏側に、「チームのアイデンティティはやっぱりディフェンス」と荻野ヘッドコーチは守備にこそこれまで積み上げてきたことであり、絶対的な自信がある。「試合に出たらディフェンスからアグレッシヴにプレーし、足が止まってきても元気な選手が控えています。それによって、コートに出たらみんなが思いきってプレーできています」と中村選手が言うように、誰が出ても遜色ないエナジーを発揮している。
ベスト16から1部の強豪チームとの対戦が続いた。明治大学[80-75]、準々決勝・日本大学[98-72]、準決勝・白鷗大学[69-68]を撃破し、決勝まで勝ち進む。日本大学にリベンジを果たせたことも大きかった。中村選手は、「昨年のリーグ戦での順位決定戦で、日本大学には2試合ともボコボコにやられました。あのときは松脇(圭志)と杉本(天昇)に3Pシュートをやられ、2人とも30点くらいを許してしまったので、この二人にはやられないように徹底マークしました。それができたことで、チームも波に乗ることができたと思います」と悪夢を払拭したことで勢いが増した。
昨年はアシスト王だった中村選手だが、今シーズンはキャプテンの久岡幸太郎選手が合計22本でトップに立った。中村選手も2位タイの16本を挙げており、チームとしてのアシストの多さも好調さの現れである。優秀選手賞には鶴巻啓太選手が選出されており、一皮剥けた中央大学は幸先の良いスタートを切ることができた。
目標は2部に降格しないこと──!?
今シーズンのメンバーにとっては、はじめての1部リーグでの戦いを迎える。中村選手に目標を伺えば、「2部に降格しないこと。とにかく1部リーグで上位に絡めたら良いなぁ」とコート上のアグレッシヴなプレーとは打って変わって元気がない。スプリングトーナメントではこれまでも2部ながらベスト8進出を果たし、4年生となった今年は決勝進出の目標を達成したが、結局中央大学の威勢の良さは春だけなのか。無難な目標に対し、やりなおしを命じる。
「今回のトーナメントを優勝する勢いで戦ってきたので、リーグ戦は1部でも全然戦えるんだという姿を見せたいです。リーグ戦もインカレも優勝を目指していきます!」
昨年のリーグ戦終了後、荻野ヘッドコーチからおもしろい話を聞いていた。中央大学バスケ部のブログには、”今までで一番頑張ったなと思ったとき”が「大学の春合宿」というほど、これまで目立った成績は残していない。中央学院中央高校出身、195cmのルーキー、古河ウェスリー選手は未完の大器であり、秘密兵器がベールを脱いだ。「将来は八村阿蓮(東海大学1年)よりもお前の方がすごくなれるように一緒にがんばろう」と荻野ヘッドコーチは声をかけながら、原石磨きがはじまった。
文・泉 誠一 写真・吉田宗彦