筑波大学が3連覇(7回目)を果たしたスプリングトーナメント(第67回関東大学バスケットボール選手権大会)は終わった。しかし、カレッジバスケはまだまだはじまったばかりである。すぐさま新人戦が待っており、下級生たちが経験を積みながらチームとしての厚みを増していくことで、本格的なバスケシーズンとなる秋のリーグ戦以降が楽しみになる。
2年前の新人戦を制した青山学院大学、敗れはしたが当時2部だった中央大学は準優勝と健闘した。あれから2年の月日が経ち、彼らの時代がやってきた。
青学のバスケはまだ終わっていないことを証明しよう
「優勝した経験があるからこそ、チームが沈んでいるときにしゃべらなければいけないことを頭で考えるよりも先に感じ取って行動に移している部分があります。そこは新人戦の経験が生きているんだと思います」(戸田貫太選手)
スプリングトーナメントでの青山学院大学は、準々決勝で筑波大学に72-73と惜しくも敗れた。一時は16点差をつける場面もあったが、終盤に追い上げられ、ラストシュートを決められずに勝ち切れなかった。波に乗っていたはずの青山学院大学だったが、その後の順位決定戦は1度も勝てないまま8位に終わっている。逆に、筑波大学はこの試合を境に勢いづき、頂点まで駆け上がって行った。
不運な判定もあったが、筑波大学との差について、「相手はリバウンドからのセカンドチャンスを決めることやインサイドアタックを武器にしています。序盤はそこを抑えることができていました。しかし終盤は、その相手の強みの部分にやられたというところは反省しなければなりません」と戸田選手は結果を受け止めている。一方、敗れはしたが接戦となったことに対し、「一昨年に対戦した時は大差(56-84)で負けてしまったので、それに比べたらしっかり手応えを感じられています」と前向きに捉えられる部分もしっかり感じ取っていた。
新チームのキャプテンを任されたのは石井悠太選手である。だが、2年前の新人戦のときは戸田選手だった。当時、「青学のバスケはまだ終わっていないことを証明しよう」と復活を誓い合ってチームを一つにして臨んだ。「明るくてディフェンスをがんばり、走れるチームにしよう」と掲げたスタイルを、その後も努力し続けたことで今シーズンは実を結びつつある。
「ディフェンスから走ることを強みにするスタイルは、これまでも重点に置いてきたことです。筑波大学戦は相手のサイズの高さに対してリバウンドを獲られてしまう場面もありました。それでも要所要所で、ディフェンスをがんばってリバウンドを獲れたことで速攻を出すこともできていました。徐々に良くなっていると思います」
下級生たちのバックアップや勢いがあるからこそ、上級生である自分たちも戦うことができています
これまでとは違い、今シーズンは廣瀬昌也ヘッドコーチの声のトーンが柔らかい印象を受ける。新人戦での優勝経験が大きな自信となり、仲間たちの成長を戸田選手は実感していた。
「一人ひとりがベンチにいる間も、出られない悔しさを抑えてコート上で戦っている選手たちを応援したり、廣瀬さんが何かを言う前に自分たちでしゃべって解決することができているような感じはしています」
何よりも新人戦のとき同様に、チームがこれまで以上に明るい。
「春のトーナメントは毎年あまり良い結果を残せておらず、それは1年生のときから経験してきました。最上級生になり、同じ轍を踏まないようにみんなが自覚を持って練習から良い雰囲気で取り組めてきたと思います。試合中は誰が出ても責任感を持ってコートに立ち、強気で臨んでくれています。そういった部分ではこれまで以上の手応えは感じられています」
2年前、当時のキャプテンだった安藤周人選手(現名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)は、新人戦を制した下級生チームは元気が良かったが、上級生と一緒になると「静かになる」と漏らしていた。戸田選手は、「下級生は上級生に意見しづらい部分があります。練習中から、言いたいことが言い合える環境を僕らが作っていかなければならないです」と風通しが良いチーム作りを意識している。
「結局、上級生だけの力では日本一にはなれません。下級生たちのバックアップや勢いがあるからこそ、上級生である自分たちも戦うことができています。下級生たちにはこれから新人戦で力をつけてもらうとともに、絶対に彼らの力がチームには必要になってきます」
強豪・青山学院大学復活に向けた最初の挑戦は、残念ながら最高の結果には届かなかった。今シーズンの目標について聞けば、「これまでは新チームがはじまるときに、その年の大きな目標を決めていましたが、それを決めてしまうと最初にコケてしまったときに次のモチベーションがなくなってしまうという話が選手から出ました」と細かく目標を設定していく方針に変えた。準々決勝で敗れた後、かつてのライバルであり、近年は勝てていない東海大学に勝利することに目標を切り替えたが、それも達成できなかった。負けてもまだまだ次がある。新たなる目標に向かい、今度こそ乗り越えられるよう努力していくしかない。
悔しい結果に終わり、反省点も多かったことだろう。だが、2年前の新人戦で頂点に立った事実は変わらない。そのときから積み上げてきた長所を伸ばしながら、チームを上向かせることだってできる。スプリングトーナメントは筑波大学が制したが、群雄割拠なカレッジバスケは今シーズンも続きそうだ。裏を返せば、青山学院大学にも十分チャンスはある。
文・泉 誠一 写真・吉田宗彦