神奈川大学ベンチでは、幸嶋謙二監督が何度も「30番」と大きな声を挙げていた。京都産業大学の30番を背負う大庭岳輝選手の耳にも、「その声はずっと聞こえていました」。
平均約26点を挙げていた関西の得点王
京都産業大学は、関西1位で第69回全日本大学バスケットボール選手権大会(以下インカレ)に乗り込んできた。2年生エースの大庭選手は、2次リーグ以降は平均約26点を挙げ、関西大学リーグの得点王に輝いている。直近では20年前まで遡らねばならないが、関東勢以外で決勝に進んだのが京都産業大学である。第1シードの拓殖大学と同じブロックには入ったが、その山場を勝利できれば勢いに乗って初の関東勢以外のチャンピオンが出るかもしれない、という期待感を関西1位に抱いていた。だが実際には、関東で一番下の12位・神奈川大学に55-64で敗れ、初戦敗退となった。
神奈川大学の徹底マークに対し、関西の得点王は為す術なく15点に終わっている。「(関西大学リーグ時の)平均点より10点足りずに負けました。もし、あと10点を獲っていれば勝てていたわけですから、やっぱりこの負けは自分のせいだと思います。本当に残念です」と大庭選手は唇を噛み締めていた。マークされることは想定内だった。「それにも関わらずに対応しきれなかったことが課題として残っています」と自分の仕事をさせてもらえなかった悔しい敗戦であった。
エースとは、チームを勝たすことができる存在
関東のチームと比較して「体の強さの差」を多くの選手は挙げており、大庭選手も同様に答えている。
「きっと普段のチーム内の練習から当たりを激しくしているんだな、ということを身をもって感じました。それは昨年の東海大学戦(●43-83)でも感じていたことです。点差が拮抗した中でもう一歩足りなかったのが、その差だったのかと思います」
関西大学リーグでは通用していたドライブも、フィジカルで跳ね返されて得点につなげられなかった。2度目のインカレだったが、「まだまだ成長したとは感じられていません」。しかし、大庭選手はまだ2年生、この悔しさをバネにまだまだ伸びる要素も十分にある。
「40分間走り続けることができず、エースとして使ってもらっているのにチームを勝たすことができなかった。エースとは、チームを勝たすことができる存在だと僕は思っています。それができず、すごく不甲斐ないです。でも、まだ2年間あるのでしっかり気持ちを切り替えて、来年こそこんな結果にならないようにまた明日からがんばっていきたいです」
エースにとって大切な覚悟を大庭選手はすでに持っていた。それさえ分かっているのであれば、その答えを解く方法は努力しかない。
勝利した神奈川大学(関東12位)は2回戦で関東10位の日本大学を66-60で破り、ベスト8進出を決めた。次戦(11月23日(木)16:00)はベスト4を懸け、拓殖大学(関東1位)vs明治大学(関東7位)の勝者に挑む。
文・写真 泉 誠一