2年前には関東大学バスケリーグ1部にいた法政大学が、転がり続けて今年は3部にいる。来年からリーグ編成が改変され、1部も2部も12チームへと拡大するために、3部の上位4位までが自動的に2部昇格となる。11月8日に第1次ステージを終え、負けなしの11連勝で首位に立つのは上武大学。10月7日、9連勝同士で相まみえた首位攻防戦は67-66の接戦の末に上武大学が勝利し、法政大学が初黒星を喫した。
昨シーズンの得点王(平均28.5点)であるマーテル テイラーバロン選手に28点、20リバウンドを許し、上武大学にインサイドでイニチアシブを取られる。リバウンド数も54:34と法政大学は20本も負けており、オフェンスリバウンドは18本もやられてしまった。最後まで諦めることなく、4年生たちが気持ちの強いプレーで勝利を目指す法政大学。残り15.5秒、和田直也選手はシュートチェックの上を行く軌道に乗せた3Pシュートを決める。ラストは植村哲也選手がコーナーから3Pシュートを沈めるも同時にブザーがなり、1点及ばずに頭を抱える結果となった。
課題を乗り越えてつかんだラストシーズン
昨シーズンの和田選手はなかなか試合に出られず、ロスターから外れることも多かった。「自分の努力不足であり、バスケットに対する考え方や自分自身の役割と責任を果たしていなかったので試合には出られませんでした。その課題を1年間ずっと考えた結果、リバウンドに絡むことや3Pシュートは絶対に決めるという気持ちを持つことが自分の強みだと気付くことができました」とその課題を乗り越え、今がある。スタッフ陣にはその「泥臭いプレー」が評価された。敗れた後にも関わらず、その壁にぶつかったことも含めて、「今年は楽しいです」と笑顔を見せている。
上武大学戦へ向け、外国人選手がいる中でのインサイドを強調して練習してきたが、そこで負けてしまった。同じように、翌日の明星大学にも敗れている。「米山(滉人)や(鈴木)悠介らインサイド陣はがんばってくれましたが、彼らだけではなく全員でプレッシャーをかけたり、ダブルチームをしながら試行錯誤しないとやっぱり勝てないんだなと感じました」と和田選手は話しており、3部でも法政大学の弱点が露呈してしまった。
2人のビッグマンはまだ2年生。特別指定選手としてB.LEAGUEでの経験をしてきたポイントガードの中村太地選手(2年)と水野幹太選手(1年)もおり、有望な下級生がいる来年を見据え、和田選手ら4年生がやるべきこともある。
「太地と幹太がゴールに向かって積極的にプレーしてくれることで周りが空いて、その分、気持ち良くシュートを打たせてくれています。少しムキになってしまうところもありますが、そこは4年生がしっかり抑えてチームとして良い雰囲気で戦っていきたいと思います」
中村太地のリーダーシップと水野幹太のトランジション
中村選手はシーホース三河で、福島南高校3年だった水野選手は福島ファイヤーボンズで、昨シーズンは経験を積んだ。先発を担うのは中村選手だったがケガがあり、その間は水野選手が任されてた。上武大学戦で先発に復帰した中村選手だったが、逆転できた2本のシュートを外し苦い敗戦を振り返る。
「相手の高さやフィジカルに来るディフェンスを少し意識してしまいました。これまでの試合では、それを意識しなくてもできてしまっていた部分があり、そっちに慣れてしまっていました。もっとインテンシティを高めて、リバウンドは5人全員で飛び込むぐらい激しくやらないといけないと思ってますし、もう一度徹底していきたいです」
「自分は早く展開したいタイプで、太地さんは落ち着かせるタイプ」と言う水野選手は、ボールを保持したらどんどんプッシュしていく。現在アシストランキング1位の水野選手はポイントガードとしての成長を見せていた。
「アシストは今年のU19ワールドカップで学んだことです。ドライブすればディフェンスが寄ってくるので、そこでいかにキックアウトできるかを考えています。3部では得点を獲って、アシストもできないと『U19ワールドカップに出たのに何を学んできたんだ』と言われてしまうので、しっかり意識しています。最近はターンオーバーも減って、アシストも増えて得点も獲れるようになってきています。自分がどれだけチームを引っ張って行けるかがカギだと思っているし、手応えは感じています」
中村選手が長けているのはリーダーシップ。「自分が先頭に立つことは李相佰杯(日韓学生定期戦)で学んだことです。先頭を切って雰囲気を作ることなど自分が経験してきたことをチームに還元しています」と話しており、1年生だった昨年から先発を任されてきた責任感が開花し、水野選手とともにチームを引っ張っている。
4/6の昇格争いとなる3部はこれからがさらにおもしろい!
ルーキーシーズンを3部で迎えた水野選手は、「個性的な選手が多く、ひとつのことにズバ抜けている選手もいるので見習うことも多いです」とこの環境でもしっかりと成長につなげている。また、そこが3部のおもしろいところでもある。
上武大学のマーテル選手を抜き、現在得点ランキングで首位にいるのは遠藤 卓選手(文教大学4年)。平均得点30.6点であり、第1次ステージ最後の2試合はいずれも42点を挙げている。11試合中30点を超えたのは7回もあった。しかしチームは2勝しかできていない。GMになった気分で、B.LEAGUEで輝くような原石探しは3部以下を観戦するときの楽しみである。
早くも10月9日より、上位と下位6チームずつに分かれて第2ステージが始まった。つまり上位6チームのグループによる戦いで4位に入れば、2部行きの切符が手に入る。初戦は上位3チームが順当に勝利したことで、関東学院大学、山梨学院大学、埼玉工業大学はいずれも7勝5敗のまま、4位争いは大混戦である。3位の明星大学までは2ゲーム差なので、アップセットにも期待したい。上位2位に入れば、2部下位チームとの順位決定戦が待っている。「最後のシーズンなのでひとつでも長く戦い、最後は勝って終わりたいですね」という和田選手ら4年生たちは、1日でも長く現役を続けるためにも負けられない。
文・写真 泉 誠一
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