大学バスケットボール界の常勝軍団と言われてきた東海大が今大会4位に終わった。今年のチームの柱となるのはU24のスプリングキャンプに参加して、李相佰盃のメンバーにも選出されているキャプテン#23佐藤卓馬と#25平岩玄。それぞれ自分が担うものを理解したうえで、それを全うしたいという思いは大会前、大会中に語った2人がことばから十分に伝わってきた。
最弱の代という汚名を返上したい(#23佐藤卓馬)
「今の4年生は下級生のころから『東海大バスケ部史上最弱の代』と言われていて、それがいやで、いやで、自分たちが4年になったときは絶対結果を残したいと思っていました」
準々決勝の中央大戦に勝利した後、インタビューに答えるキャプテンの佐藤卓馬は開口一番そう切り出した。昨年のチームには寺園周斗(九州電力)、伊藤達哉(京都ハンナリーズ)を筆頭にメンタルが強い4年生が揃い、苦しい場面でも「4年生がなんとかしてくれる」と知らず知らずのうちに頼ってしまう自分がいたという。けれど、今年はキャプテン。
「4年生が引退するとき、寺園さんや伊藤さんから『次のチームはおまえが大事だぞ』と言われました。それを忘れず、自分が先頭に立ってチームを引っ張っていくことはずっと意識してやっています。実は自分はちょっとチキン(気が弱い)なところがあるんですが、今年はそれを感じさせないぐらい力強いプレーをしたい。それは白戸(大聖)や卜部(兼慎)や山本(健太)や4年生はみんな同じ気持ちです。最弱と言われる僕たちは、一見そう見えないかもしれないけど、みんな内には熱いものを持っています。メンタルではまだもろさがありますが、走力がある分爆発力はある。ディフェンスを頑張って走れれば去年に負けないような力を発揮できると信じています」
そのために必要なものは?の質問には「集中力です」と即答した。
「集中力をいかに継続できるかが鍵だと思っています」
自分がもっとやるしかない(#25平岩玄)
今年のチームのキーマンの1人として名前が挙がるのは2年センター平岩玄だろう。3月のスプリングキャンプから日本代表候補重点強化合宿へと、チームを離れる時間は長かったが、代表合宿では「ここで培ったものを東海大に持ち帰りたい」と意欲的に語っていた。
「自分は能力が高いわけではなく、巧いわけでもないので、判断のところで出し抜いてアドバンテージを取ることが必要です。その判断力の材料となる新しいこともここでたくさん教わったので、それは東海大でもどんどん使っていきたい。去年は4年生の勝負勘で勝たせてもらったところがあるので、今年は自分がもっとやるしかないと思っています」
『やるしかない』という一言を具体的に表せば「5番の自分がプレーメーカーになって起点を作っていくということです。そのため今年は明確に数字で自分の目標を立てました。『個人のスタッツやプレータイムで選手の価値は計れない』という陸さん(陸川章監督)の考えはチームの大前提としてありますが、それでも僕は今年は二桁得点、二桁リバウンドという数字を自分に課しました。うちが勝利するためには常にダブルダブルを目指さなければならないと思っています」
だが、こうした2人の意気込みに反し、東海大は準決勝(対白鷗大 63-80)、3位決定戦(対日本体育大 58-76)ともに大差で敗れ去った。2試合ともに共通して見られたのは流れを引き寄せかけたときのミス、チャンスでのターンオーバーが逆に相手の勢いとなり、そこから再度リズムを立て直すことができなかった。武器とされるディフェンスで従来の粘りが見られなかったのも『東海大らしくない』敗因の1つと言えるだろう。3位決定戦後「力不足でした。課題満載です」と語る陸川監督の顔にはいつもとは違う厳しい表情が浮かんだ。
我々はどんなチームなのか?それを再認識する必要がある(陸川章監督)
「完敗でした。我々はどんなチームなのか?我々はディフェンスで流れを作るチームです。そのアイデンティティを再認識して、もう一度鍛え直さなければダメだと感じました。オフェンスでミスが出たら焦ってしまい、そこからすぐディフェンスに切り替えるというメンタリティが足りない。また、チームというのは個々の責任によって出来上がっていくものですが、その個の部分での強化がさらに必要だと痛感しました。4月に入ってポイントガードの笹倉(怜寿)がケガをして、(寺嶋)良が代わりにやることになったのですが、彼はどちらかと言えば2番タイプ。そこで急遽ルーキーの西田(優大)にポイントガードをやらせてみました。西田には負担をかけましたが、よく頑張ってくれたと思います。今回は反省点ばかりが目立つ大会となりましたが、力不足とはいえ可能性はあるチームだと思っています。ここから秋に向けて這い上がっていくしかありません。壁を乗り越えて行く強さを身に付けていきたいです」
陸川監督によると、ルーキーで春の大会初戦からスターティングメンバーとなったのは、これまで竹内譲次(アルバルク東京)、石崎巧(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)、田中大貴(アルバルク東京)の3選手のみ、今大会先発した西田はそれに次ぐ4人目のルーキーになるわけだ。
「彼の持ち味は精度の高いシュート力。U19ではシューターとしてスコアラーの役目を担っていますが、私は彼をU18から見ていてピックの使い方とかパスの巧さとかガードができる選手だなあと感じていました。1番に起用する機会がまさかこんなに早く来るとは思ってもみませんでしたが、今回苦労しながらも学んでくれたものはたくさんあるはずです。将来は1番~3番、さらには4番もできるオールラウンダーに育ってくれることを期待しています」(陸川監督)
「1年生ということを言い訳にしたくない」(#19西田優大)
監督から大きな期待を寄せられた西田の口からはまず反省点が挙がった。
「東海大はディフェンスのチームなのにそこが徹底できていませんでした。ターンオーバーで自らチャンスを潰してしまったのは細かなところでの詰めが甘いということです。個人的にはポイントガードとしてみんなが安心できるようなボール運びができていないし、まだ技術が全然足りません」
しかし、反省の次には前向きなことばが続く。
「東海大の練習ではディフェンスもオフェンスも激しさを求められます。それが高校とのときと違うところで、その練習を通して足りないものを身に付けていかなければと思っています。ディフェンスを頑張るのはもちろんですが、自分は点を取るという役割をもらっているので、シュートの精度を上げていくのも重要です」
代々木第二体育館のコートに立つことは初めての経験だったこともあり、最初は緊張して「少し硬くなりました」と言うが、「だんだん慣れていって、気持ちの面ではわりと伸び伸びと自分らしさを出せた気がします」と、手応えも感じたようだ。印象的だったのはインタビュー中に何度も口にした「悔しい」ということば。「やっぱり負けるのは悔しいです」と語る顔に負けん気の強さがにじむ。「1年生ということを言い訳にせず、チームの勝利に貢献できるよう頑張っていきたい」の一言にはルーキーらしからぬ頼もしさがあった。
関東大学バスケットボール連盟
5/19開幕!第40回李相佰盃日韓学生バスケットボール競技大会 サイト
文・松原貴実 写真・安井麻実