スピードバスケットに変化し勝利を奪う
2002年に優勝して以来、15年ぶりにベスト4進出を果たした古豪・日本体育大学。「第66回関東大学バスケットボール選手権大会(以下トーナメント)」では、1部の専修大学を85-73で破ってベスト4進出を決めた。優勝した筑波大学にこそ57-104と歯が立たなかったが、3位決定戦ではトランジションバスケットで東海大学を相手に76-58で走り勝った。日本体育大学は3位となり、幸先の良いスタートを切ることができた。
キャプテンの田口航選手は、「昨年のスコアラーだった赤土(裕典)さん(愛媛オレンジバイキングス)が抜けましたが、その分、各ポジションの全員が得点を獲れるようになりました。今年は、(ゴールに)行けるところは全部行ってしまおうと、スピードバスケットを目標にしています」と昨シーズンからの変化を説明してくれた。チーム一丸となってディフェンスし、奪ったボールをスピーディーかつ大切につないで得点を挙げるスタイルになったことで、「チームとしてまとまっていたり、協力してプレーすることができるようになった」ことが勝利に結びついている。
トーナメント前に行われた毎年恒例の筑波大学との定期戦は、68-69で惜敗。だが、2部の日本体育大学が日本一を相手に対して、1点差で凌いだのは大健闘だった。「馬場(雄大)選手と杉浦(佑成)選手がチームに合流したばかりだったそうですが、それでもチャンピオンチームというのは変わりがないです。あの試合を通じて多少の自信にはなりました」と弾みをつけた。
高校バスケNo.1となった母校の恩師からの激励
「近年3位になったことがなかったので記録としては良いですが、リーグ戦に向けてモチベーションを高く持ち続けられるかが大事になってきます。キャプテンとしてしっかり声を出して、みんなを鼓舞して、良い雰囲気で練習をしていけばもっともっと強くなっていけると思います」と言う田口選手。2012年に降格して以来続いている2部リーグから、今年こそ抜け出したいところだ。
トーナメントを通じて、「まだまだミスが多かったり、コミュニケーションが取れていない部分があり、それではリーグ戦を勝ちきることもできません。あとは体力面。トーナメント中はケガ人が多く、7〜8人でプレーしていました。長いリーグ戦を戦い抜くためにも、基礎体力を向上させることが必要です」と課題が見つかった。これらをクリアすべく、きつい夏が待っている。
新チームのキャプテンとなった田口選手は、「昨年のキャプテンであり、自分の高校の先輩でもある大城侑朔さん(東京サンレーヴス)はあまり試合に出る機会がなく、『コートの中で引っ張ることができなかった』という話をされていました。自分は試合にも出させてもらっているので、コートの中でチームメイトを鼓舞したり、自分のプレーでみんなを引っ張っていこうと思います」というのが理想像だ。田口選手は福岡第一高校出身であり、昨年は高校バスケNo.1に返り咲いたことも大きな刺激となっている。
「OB戦に行った時、井手口(考)先生に『がんばれ』と言われました。福岡第一出身のメンバーは井出(優希)と河野(佑太)、武藤(海斗)がおり、4人でいつもがんばろうと話しています」
トーナメントの通算優勝回数が20回を数える日本体育大学がぶっちぎりで多い(2位の日本大学は10回)。筆者の世代の日本体育大学には三浦祐司氏、後藤正規氏、古田悟氏、赤穂真氏らがおり、大学界だけではなく日本バスケ界を牽引していたと言っても過言ではない。ゆえに古豪復活が待たれる……。
だが、前回優勝から15年が経過し、遠い昔となった今、若き当事者である田口選手はどう感じているのだろうか?
「OBの方々からは『しっかりやれ』という励ましの言葉はいただいています。そこでプレッシャーを感じてしまうとうまく行かなくなってしまうので、自分たちの持っている力を出せるだけ出して、その結果が1部昇格やインカレ出場につながっていければ良いと思っています」
ついつい日本体育大学が良い成績を収めてしまうと、過剰に期待してしまうきらいがある。今の日本体育大学のスタイルをしっかりとリーグ戦で証明してもらえるよう温かく見守りながら、新時代が切り拓かれることを心待ちにしたい。
文・泉 誠一 写真・安井麻実