昨年のインカレ(第68回全日本大学バスケットボール選手権大会)では見事3連覇に導き、MVPに輝いた筑波大学4年、杉浦佑成選手。優勝直後のインタビュー時に「自分の意見を仲間に伝えるのができなくて、ずっと言われてることですけど、いつも周りに引っ張ってもらっています。このままみんなに任せっきりでは優勝はない。声を出すときには出さないといけないとは思っています」と話していた。その後、表紙を飾った弊誌Vol.6での生原秀将選手(現栃木ブレックス)と馬場雄大選手との対談時には「打破」を今年の抱負に掲げ、「自分の殻を破りたい」と宣言している。そのチャンスが日本学生選抜チームで早くもやってきた。杉浦選手は、5月19日に開幕する「第40回李相佰盃日韓学生バスケットボール競技大会(以下、李相佰盃)」へ臨むこのチームのキャプテンを任されている。
遠慮せず、緊張せず、思いっきりできる環境作り
ーー人生初のキャプテン!どのようにチームを引っ張っていきたい?
みんなが遠慮せずにプレーしやすく、下級生も緊張せずに思いっきりできるようにしたいと僕は思っています。
ーー下級生も少なくはない中でも、チームの雰囲気が良いのはすでにキャプテンが目指すチームになっているのでは?
さっき言ったようなチームがいいなと思っていますが、それに加えて、どうしてもチームが落ちてきたときに、普通のキャプテンであればちゃんと士気を高めるような声を出すと思いますが、そこがまだ全然できてないです。良いときは良いけど、悪いときにこそキャプテンとしてどうするかが大事ですし、その辺がまだ足りていません。
ーー歴代の先輩たちで見習いたいと思うキャプテンは?
みんなそれぞれ良いところがあり、締めることができるキャプテンでした。昨年の生原(秀将)さんは厳しいことを言えるキャプテンでした。勝つためにもそれはすごく大事なことだと思いますが、逆に下の選手たちはそれにビビって萎縮してしまっているなとも、僕は思っていました。締めることは大事ですが、その辺のさじ加減をしっかりできるようにしたいです。
ーー韓国遠征を3勝2敗で勝ち切れたのも、キャプテンとして気分良くプレーできるように引っ張れた部分があったのでは?
いや、そんなことはなく…。引っ張れなかった分、苦しいときにこそ自分が率先してがんばろうと思っていました。声を出せない分、ディフェンスを率先したり、みんなの気持ちが切れそうなときにこそプレーでハッスルすることは心がけていました。
ーー杉浦選手の優しい性格から考えると、厳しく言わなければいけないような状況を作らずに、いつでも好調な部分をキープすることを心がけるようなキャプテンになれば良いのでは?非常に難しいとは思うけど、高いレベルを意地するための雰囲気作りであればできるかもしれない。
そうっスね。怒らないのがベストです。
今年は4番ポジションで気を遣うプレー
ーーキャプテンとしてではなく、一人の選手としてこのチームでどう貢献していきたいか?
今年は4番(パワーフォワード)として得点を獲るのはもちろんですが、それ以外にもすごく気を遣わなければいけないポジションだとも思っています。センターは大きな相手とバチバチと体を張って戦わなければならず、ガードやフォワードには能力が高い選手が多い分、ディフェンスに集中しなければなりません。その点、4番は比較的得点を獲るプレーヤーは少ないと思っているので、リバウンドであったり、ディフェンスでカバーするとか、相手のプレーを遅らせたりすることが大事だと思っています。
ーー昨シーズンは3番となったが、今シーズンは4番に戻る?
そうですね。筑波でも完全に4番です。でも、外から仕掛けることでディフェンスのズレを作れることができるのでプレーしやすい部分はあります。
ーースプリングキャンプを通してルカ・パヴィチェヴィッチテクニカルアドバイザーの練習を行い、実際に韓国遠征で試してみて得られたものは?
ディフェンスはすごく良いなと思いました。キャンプ中はゲームライクな5on5はありましたがスクリメージなどはなく、実際にゲームではどうなるんだろうと思っていました。いざ、韓国に行ってゲームをしたら、すごくディフェンスが機能しているという感覚がありました。ポジショニングの考え方が今までと違っていましたが、ゲーム中はうまく守れることができ、簡単に点差を離されることがなかったです。
ーーディフェンスさえがんばれば、強い相手にも勝機を見出せる手応えを感じられた?
そうですね。もちろん、もっと強い相手になったらどうなるかは分かりませんが、韓国遠征での手応えとしては、ディフェンスでの集中力を切らさずにがんばれば、しっかり食らいついていけることは実感しています。
ーー4番となり、相手の大きさにどう対抗できたか?
韓国遠征時の4番ポジションはさほど大きくはなく、ガツガツやってくるタイプでもなかったです。
ーーしかし、今夏に待っているユニバーシアードで対戦する世界の相手はさらに大きく、得点を獲るような選手もいるかもしれない。
そうですね。もっとガンガン来ると思います。いつも筑波の練習でも心がけていますが、森下(魁/筑波大学2年)や玉木(祥護/筑波大学3年)など僕よりも大きく、力強い選手を相手にポストアップされても、簡単にボールを持たせないようなディフェンスはできるようになってきています。逆にアウトサイドでのディフェンスはまだ課題です。
平常心で、チームディフェンスから我慢し、勝ち越しを目指す!
ーー李相佰盃へ向かう現時点で、さらに高めなければならないことは?
ルカさんは本当に細かいところまで厳しく言ってくれていました。しかし、(このメンバーでの練習期間が空いてしまうことで)その細かい部分が段々と疎かになってしまうと簡単に崩れてしまいます。僕や(馬場)雄大、玉木、(平岩)玄(東海大学2年)は今も日本代表候補として合宿に参加しており、ルカさんのシステムを理解しているメンバーがしつこくしつこく言っていく必要があります。
ーー李相佰盃へ向けての意気込みを?
韓国遠征で手応えを掴んでいますし、どこまでやれるか挑戦したい。これまでも李相佰盃ではなかなか日本は勝てていないですし、僕は過去2回出場していますが、一昨年前に1回勝っただけ(〇79-77)です。目標は全勝ですが、今年はなんとしても2勝を挙げて勝ち越したいです。
ーー昨年は初戦に大敗(●48-106)を喫したが、大会の入り方として注意すべき点は?
最初から相手にガツンと来られ、劣勢になってしまったことで、それぞれが自分で何とかしようと無理にシュートを打ってしまっていました。チームプレーができずに負けたのが昨年の初戦でした。1on1の勝負ではなく5on5で勝負していかなければなりません。平常心で、チームディフェンスから我慢して戦っていきたいです。
第40回李相佰盃日韓学生バスケットボール競技大会
会場:大田区総合体育館
5月19日(金) 16:00 女子戦/18:00 男子戦
5月20日(土) 13:00 女子戦/15:00 男子戦
5月21日(日) 13:00 女子戦/15:00 男子戦
全日本大学バスケットボール連盟
現在、「第66回関東大学バスケットボール選手権大会」開催中!
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文・写真 泉 誠一