3回戦で名門・洛南を破りベスト8進出を決めた近畿大付属の大森健史コーチの目にはうっすらと涙がにじんだ。
「近畿のチームにとって洛南は立ちはだかる壁のような存在でしたから。いつかその壁を打ち破ることが目標でした。だから、(ベスト8入りして)メインコートに立てるということより、今はとにかく洛南を破ったことの方が嬉しいです」
スポーツが盛んな近畿大附属は、同時に文武両道を目指す進学校でもあり、歴史あるバスケットボール部といえども全国から有力な選手が集まるわけではない。現在の部員もそのほとんどが地元大阪の出身だ。厳しさの中にもどこか伸び伸びとした雰囲気が漂うのは、選手の自主性を尊重する部風にあるのだろう。総勢74人の大世帯でありながら、『縦糸』ではなく『横糸』でつながったチームには明るい結束力がある。そうした環境の中で育った今年のチームは「中と外のバランスが良く、私がこれまで指導してきたなかでも1番力がある」と、大森健史コーチは早くから手応えを感じていた。
「チームバランスが良くなった要因には、やはり西野(曜・197cm)の存在があると思います。潜在能力を秘め、将来有望な西野がなぜ(他の強豪チームではなく)うちに来たのかはわかりませんが、多分、上からゴリゴリ押し付けられるよりもう少しのんびり自由にやりたかったのではないでしょうか(笑)」(大森コーチ)
そのことばを本人に伝えると、笑顔を見せて「否定はしません」――高校ではバスケット一辺倒ではなく、「いろんなことを楽しみたかったから」と言う。
だが、その西野の意識に“変化”が生まれたのはU-18の日本代表メンバーとして出場した『第23回日・韓・中ジュニア交流競技大会』でのことだ。マッチアップするアジアのセンターたちの高さ、身体の強さをコートの中で目の当たりにした。胸の内からじわじわ湧き出てきた悔しさ…「もっとフィジカルを鍛えなければと思いました。自分の中にそういう自覚が芽生えて、バスケットに対する意識が変わってきたと思います」