関東の大学97チームが参加するマンモストーナメント、「第65回関東大学バスケットボール選手権大会(以下、春のトーナメント)」は、4月23日から熱戦を繰り広げながら4回戦まで進み、5月に入るとシード校が登場した。勝ち上がってくるチームの勢いを受け止めながらの初戦は、シード校といえども冷や汗をかくことも多い。
2部ながら、昨年3位の法政大学は明治学院大学に第4ピリオド中盤までリードされた。その第4ピリオドだけで31点を挙げ、86-71で逆転勝利。1部の専修大学も神奈川大学に85-79、早稲田大学は東洋大学に89-83、拓殖大学は埼玉工業大学に82-78とそれぞれ辛勝し、綱渡りの初戦突破となった。
春のトーナメントで3連覇を目指す東海大学とインカレ2連覇中の筑波大学は、チームとしてまだしっくり来てはいない中でも、盤石の“横綱相撲”で今シーズンの幕を開ける。筑波大学は、動ける190cm台を擁する東京成徳大学を相手に77-39と快勝。東海大学も1年生センターの平岩 玄選手が先発で出場し、チームを勢いづけると81-48と危なげない試合展開を見せた。
今年はユニバーシアードや李相佰盃日韓学生バスケットボール競技大会へ向けた合宿が重なり、この2チームからは多くの選手が選出され、チーム練習はままならない状況だった。「先週末にようやくチーム練習ができたが、全員揃ったのが金曜だけです。ユニバーシアード組がいない時に、4年生たちが頑張っていました。過去には東海大も同じように選手が揃わなかったわけです。日本代表に選ばれる環境があれば選手たちは強くなるし、チームとしては底上げにつながります」と筑波大学・吉田健司ヘッドコーチは前向きに捉える。
東海大学の陸川 章ヘッドコーチは、 「チームにはまだまだなっていません。でも、今年のチームの良いところは誰が出ても遜色ないところ。逆にベンチに入っていないメンバーも含め、チーム内のポジション争いは熾烈を極めるのかなという思いがあります」と話しており、選手層の厚さが際立っている。
今年の関東大学バスケシーンも、筑波大学と東海大学の2チームが牽引する形が容易に想像される。トーナメントやリーグ戦を制しながらも2年連続日本一から遠のいている東海大学。逆に「インカレだけ優勝するのはおかしい」と吉田ヘッドコーチは周りから妬まれているが、最後に春のトーナメントを制したのは1954年(第10回)と遠い昔であり、当時は東京教育大学だった。
優勝に近いこの2チームが、最初のタイトルとなる春のトーナメントを制することができれば、有望な下級生が多い両チームにおいて大学4冠(春のトーナメント・新人戦・秋のリーグ戦・インカレ)への期待も高まる。最上級生となった4年生たちに今シーズン、そして4冠への想いを聞いた。
■筑波大学 #2 満田丈太郎選手(188cm/SG/北陸高校)
──インカレを2連覇して迎えた今年の意気込みは?
満田:東海大学や他のチームはトーナメントに向けて早くから準備しており、すでに出来上がっています。これまで春のトーナメントは優勝できていないので、チャレンジャーという気持ちを持って全力で戦って行くしかないです。4冠を目指すにあたり、リーグ戦があるので筑波にとってはそこがかなり厳しいところです。長期戦になると集中力が続かなくなる時があり、そこがリーグ戦で勝てない要因です。いかに気持ちを持ち続けて戦えるかどうかが大事であり、それについて選手同士で話し合うこともあります。昨年以上にもっともっとコミュニケーションを密にしていけば、目指すべき4冠も見えてくるのではないかと思います。
──4年生になって意識や役割での変化は?
満田:昨年のインカレで実感しましたが、最後の最後で主力選手が一人欠けたときにガマンできず、相手に攻められてばかりになり、耐え凌ぐことができませんでした。そのガマンの時間帯にどういう声をかけるか、チームとして自分がどういう役割をしなければいけないかを考えるようになりました。自分もコートに立っているので、プレーもそうですが、もっと声を出してチームを鼓舞していかなければなりません。
──春のトーナメントを制するためにやるべきことは?
満田:チーム練習はあまりできていませんが、メンバーは昨年とほぼ代わっていないので、出ている選手たちはしっかり今までどおりの仕事をし、新たにコートに立つメンバーは今まで積み重ねてきたことを出せれば、チームとしてマッチすると思っています。全員が全力でやることが大事。弱気にならず、今年はイケイケムードがあるのでそのまま突っ走りたいです。トーナメントでの一戦一戦の中で、どんどんチーム力を高めていきたいですし、そうすることで新人戦やリーグ戦にも良い形でつながっていくと思っています。
──今年のチームはベンチも含めて元気が良いように感じられるが?
満田:過去にないほどみんなで盛り上げ、チームは良い雰囲気になっています。でも、その中でガマンする時間帯があり、まとめ役があまりいません。今まではイケイケだった僕らも4年生になりましたから、そこを制御する役割を持たなければいけません。その兼ね合いがまだ難しいところです。
■東海大学 #35 伊藤 達哉選手(173cm/PG/洛南高校)
──今春はユニバーシアード日本代表合宿などがあり、選手や陸川ヘッドコーチもチームを留守にする時間が長かったが不安はないか?
伊藤:自分たちがユニバーシアードの合宿でチーム練習を抜けることもありましたが、その分、他のメンバーが練習試合を積み重ねてきたことでチームのレベルもだんだん上がってきています。自分がダメな時でも、代わりのメンバーが良いプレーをしてくれるので、そこは信頼しています。
──春のトーナメント3連覇に向けては?
伊藤:チームとしてはこのトーナメントは通過点であり、最終的にインカレで勝つためにやっています。しかし、3連覇が懸かっている以上は狙わないといけないですし、それに対するプレッシャーはありません。
──当然、大学4冠を狙っている?
伊藤:自分たちの代の新人戦(2年次/2014年決勝 東海大学 ●57-69○ 筑波大学)は、決勝戦で筑波に負けて悔しい思いをしています。そこは後輩たちにしっかり勝ってもらって、今年こそ4冠を目指していきたいです。
──4年生になって意識や役割での変化はあるか?
伊藤:昨年は(ベンドラメ)礼生さん(日立サンロッカーズ東京)任せというか、頼ってしまう部分がありました。礼生さんの背中を見ていろいろ学んできたので、今年は自分が体現していきたいです。
──#13中山拓哉選手(182cm/PG/東海大相模高校)とのバックコートコンビは、対戦相手から恐れられているが?
伊藤:そこはやっぱり、他のチームには負けてはいけない部分ですし、今年も継続しきます!
4年生にとっては最後の大学バスケシーズンが幕を開けた。一つでも多くのタイトルを置き土産として残すとともに、B.LEAGUEに活躍の場を見出すためにもアピールしなければならない。大学4冠へ向けた最初のタイトルを決める春のトーナメント決勝戦は、5月8日(日)16時20分より代々木第二体育館でティップオフ。準決勝からJ SPORTSにてTV中継される。
5月2日時点で16強が出揃ったばかりであり、何が起こるかわからない一発勝負のトーナメントは、ここに紹介した東海大学と筑波大学も勝ち上がれるかどうかは誰にも予測不可能だ。そんな危うさこそがあるトーナメントはやっぱり楽しい。
編集部注:
5月7日 準決勝(16:40)筑波大 vs 早稲田大 (18:20)東海大 vs 拓殖大
5月8日 決 勝 16:20より ※会場はいずれも国立代々木競技場第二体育館
関東大学バスケットボール連盟 ⇒ http://www.kcbbf.jp/