Text & Photo by Seiichi Izumi
必然的に4年生は卒業し、新たなる新入生を迎え、常に新陳代謝が行われる大学バスケにおいて、1年間のシーズンを通したコーチマネジメントに注目するのも楽しい見方の一つである。一発勝負のトーナメントから始まり、1~2年生を鍛える新人戦で腕試し。そこで見えた課題と、チームとして目指す方向性を夏の間にみっちり叩き込み、秋のリーグ戦で実戦を通して昇華させ、インカレでしっかりと花開かせる。特に今年は、各チームにU-17世界選手権を経験した選手や200cmを超える有望な1年生が多く入っており、彼らがプレータイムを与えられるかどうかが、コーチたちの“我慢と度胸”が試されるところだ。
今回の企画のラストを飾るのは、2年前までプロ選手としてリンク栃木ブレックスでプレーし、日本代表でも長年活躍した網野 友雄ヘッドコーチ。昨年より日本大学を指揮し、1年目にして見事、1部リーグへ昇格させ、古豪復活に成功。昨年のトーナメントでは2部ながらも7位と健闘し、「何が起こるかわからない春」にさらなる上位進出が期待される。
■日本大学:網野 友雄ヘッドコーチ
関東大学1部リーグ(昨年の成績/関東トーナメント7位、関東リーグ戦2部1位、インカレ2回戦敗退)
──今シーズンのチーム状況はいかがですか?
網野:昨年に比べてサイズが小さくなるので、どうしても今までのバスケットとは変えざるを得ない状況です。昨年から残っている良い部分もあり、ディフェンスは継続してやっていきたいですが、今日みたいな出だしの悪さ(4月16日の慶應大学戦)では、どこが相手でも絶対に勝てない。そこはもう一度修正しなければいけないところです。
ディフェンスからトランジションバスケットをしなければいけないので、その切り替えの部分と、そこからの流れを一番大事にしたいと思っています。
──期待の1年生#8軍司 泰人選手(F・194cm/土浦日大)、#15松脇 圭志選手(SG・183cm/土浦日大)、#10苗田 将輝選手(PG・175cm/北陸)、#3ジョワラ・ジョセフ選手(C・193cm/日大豊山など))が多く入ってきましたが、ご自身でリクルートされたのでしょうか?
網野:半分くらいですが、良いなと思う選手に関してはリクルートに動きました。OBの先生方もたくさんおり、つながりもあります。
──昨年は就任1年目にして2部から1部に昇格させました。今年は、チームにどのような変化を期待していますか?
網野:関東の1部は「大学日本一」に一番近いリーグです。そこに自分たちがいるということを学生たちは自覚してほしいです。昨シーズンの目標は「2部から1部に上がる」のと同時に、「2部からの日本一」を挙げていました。しかし、後者に関してはどうしても選手自身にその実感がなく、本当に自分たちが日本一になれるのだろうかと半信半疑でした。そこは、今年は1部にいるわけですから、「自分たちにもチャンスがあるんだ」と自覚が出てきてほしいところです。
──自信をつけるためにもトーナメントは重要になりそうですね。
網野:一発勝負のトーナメントであり、しかも春先で、どのチームもまだ試行錯誤をしている段階ですから、何が起こるかわかりません。いずれにしてもチャレンジャーであり、何も恐いものはないので思いっきりやらせたいと思っています。
──日本代表キャプテンとして活躍し、日本のトッププロとして培ったものをどうチームに注入していますか?
網野:バスケットのことも生活面も、人間性のこともそうですが、僕が感じてきたことは伝えているつもりです。その中でも人間性の部分が一番大きく、いろいろ経験して来た中で、今、自分のいる立場や環境はけっして当たり前のことではありません。彼らも高校から上がってきて、良い体育館で練習して、何不自由なく生活しているわけですが、それ自体も当たり前のことではありません。いろいろな方のサポートがあってこそ、今があるわけです。それに対し、自分たちがどう返していくのかを伝えているつもりです。
──注目選手を挙げてください。
網野:期待するのはキャプテン#11門馬 圭二郎(4年・F・186cm/白樺学園)と副キャプテン#5仁平 拓海(4年・F・191cm/洛南)。この4年生たちがリーダーシップを取ってくれており、昨年以上にチームはまとまりがあります。サイズが低くなってしまった部分と、シューターが多すぎる部分が多少あるので、そこは難しいところでもありますが頑張っていきたいです。
今年の大学バスケを占う春のトーナメント『第65回関東大学バスケットボール選手権大会』は4月23日~5月8日まで、国立代々木競技場第二体育館をはじめ、9会場で開催される(準決勝、決勝戦はJ SPORTSにて放送予定)。
試合日程やトーナメント表は、関東大学バスケットボール連盟オフィシャルサイト(http://kcbbf.jp/)にてチェック!
なお、各会場では『平成28年熊本地震』に対する義援金募金活動を実施。被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げるとともに、温かい支援の輪を広げていこう。