文・松原 貴実
11月1日に最終日を迎えた関東大学男子バスケットボールリーグは、東海大が見事3連覇を達成。前日の法政大戦に勝利した時点で優勝は決定していたものの、筑波大との最終戦も終始気迫に満ちたプレーで圧倒し、78-54の大差で有終の美を飾った。
◆優勝・東海大
昨年のメンバーからザック・バランスキー(現トヨタ自動車アルバルク東京)、晴山ケビン(現東芝ブレイブサンダース神奈川)が抜け、ややスケールダウンした印象が拭えなかった東海大だが、「その分、今年は総合力で戦えるチームになった」と陸川章監督。「確かに個人能力でいえば去年のチームの方が高かったと思います。たとえばザックは1人が3人分ぐらいの仕事をこなすことができた。ケビンのブロックショットにも迫力があった。そうした突出した個人技はありませんが、今年は誰がコートに出てもきっちり仕事をするチームになりました。だから大きく崩れることはない。その強みが4Qにじわじわ出てくるようなチームですね。私は(東海大というのは)選手たちが4年間で成長していくチームだと思っているので、そういった意味でも今年はいいチームになってきたなという手応えはあります」と、振り返った。
心技でチームをリードするキャプテン・ベンドラメ礼生
キャプテンとしてチームを牽引し、MVPに選出されたベンドラメ礼生(#0・4年)もまた陸川監督と同じく、バランスキーや晴山が抜けたことで「ディフェンス、リバウンドの力強さが去年より劣る」ことは感じていた。ただ「下級生が経験を積んだことでガード陣の力は去年より増していると思います」とプラス材料を挙げる。「スタメンから控えのメンバーに代わっても戦力が落ちない。さらに11人目、12人目の選手も力をつけてきている。それはうちの最大の強みだと思います。ケガから復帰した晃佑(#21橋本・4年)もこれからさらに力を発揮していくだろうし、ますます楽しみなチームになっていく予感がします」
リーグ戦を控えた時期に発熱を伴う喉の炎症を患ったベンドラメは、食事が摂れない、声も出ないという状態のまま開幕戦を迎えた。「夏合宿で少し増やすことができた体重が7kgぐらい減ってしまいました。初戦はディフェンスコールもできなかったし、速攻で息切れしてしまうほど体力が落ちていました。徐々に回復はしていきましたが、体調によって波があったのは確かです」
それでもしっかり結果を残すところはさすが。アウトサイドシュートが不調なときはドライブ、速攻で確実に得点を重ねた。今大会ではケガでコートを離れた小島元基(#1・4年)に代わって先発メンバーに起用された伊藤達哉(#35・3年)とコンビを組むことが多かったが「自分は延学(延岡学園高校)時代からガードの目を見て合わせることを意識してやってきたので、それによって自然に相手が何を狙っているのかがわかるようになりました。達哉もこっちの目をちゃんと見てくれるので、アイコンタクトを取って、いつパスが来ても応えられるよう準備はしてきたつもりです」
2番ポジションでコートに立つ今年は「今まで以上に積極的に点数を取りに行くことを考えています」と言い、しばらく離れている1番ポジションを任されたら?の問いには「やっていなかった分、多少不安はありますが、それなりに自分の良さは発揮できるような気がします」と、きっぱり答えた。
見事な瞬発力で見る者をあっと言わせるリバウンド、スティール、相手を出し抜くトリッキーなプレーには定評がある。下級生のころから場内を沸かせた『予測不可能なプレー』は今も変わらず観客を驚かせる。そして、そこに加わったのは経験から学ぶ力だ。
拓殖大学との1戦目に敗れ(延長戦86-88)、3年連続リーグ全勝優勝は逃したが、「あの負けから見えてきたものもあったので、今は負けてよかったと思っています。リーグ途中から思ったのは、前半から飛ばし過ぎてはいけないということ。前半から無理なシュートを打ったりすると流れが悪くなるので、無理はせずきれいなバスケットというか、ガチャガチャしないで徐々に調子を上げていくことを意識するようになりました」
トーナメント、リーグ戦を制し、残るはインカレという大舞台のみ。これに勝てば東海大バスケットボール部史上初の3冠を手にすることになる。
「去年リーグ戦を全勝しながらインカレで敗れたのは、プレーオフ(昨年はリーグ上位4チームが最後にトーナメント方式で戦った)で筑波と接戦して、筑波に勢いを与えてしまったことが原因の1つではないかと思っています。だから、今日は圧倒して勝つ!という気持ちもありました。そういった意味でもこういう形で終われたのはインカレにつながると思っています」
最後にインカレに向けての抱負を尋ねると、返ってきたことばは「3日間オフをもらえるので、みんなにはそこでリフレッシュしてもらって、そこからインカレまでの短い時間にリーグ戦での課題を突き詰めていきたいです」――本人は恐らく無意識だっただろうが「みんなでそこでリフレッシュして」ではなく、「みんなにはそこでリフレッシュしてもらって」の一言にリーダーとしての自覚が表れていたような気がする。
「謙虚であり、素直であり、クレバーな選手。だからこそ成長し続けているのだと思います」と、陸川監督が称するキャプテンは総合力で戦う東海大の要となってインカレ優勝を目指す。
◆準優勝・拓殖大
リーグ戦で得た『自信』を新たな武器としたい
「優勝は東海大、筑波大、拓殖大の争いか?」と言われた今年のリーグ戦で、東海大に唯一土をつけ、筑波大に2勝した拓殖大は優勝こそ叶わなかったが、1試合ごとに選手が自信をつけていった感がある。絶対的エースのジョフ・チェイカ・アハマド・バンバ(#23・3年)はもとより、ユニバーシアードメンバーとして世界の舞台を踏んだ赤石遼介(#99・4年)、成田正弘(#39・3年)の成長も頼もしい。だが、池内泰明監督が今年のチームのキーマンとして挙げるのはキャプテンの岡本飛竜(#0・4年)と副キャプテンの岩田大輝(#29・4年)だ。
「飛竜にはリーダーシップがある。チーム練習でも自主練でもいつも先頭に立って頑張る。そういう姿が下級生たちに与える影響はとても大きいと思います。また、岩田はあの身長(180cm)で大きな相手を抑えてリバウンドやルーズボールをもぎ取る。いずれも気持ちがないとできないプレーです。4年生とはこういうものだということを彼らが見せてくれることで、チームがまとまってきました。拓大はバンバのチームだと見られがちですが、私は4年生のチームだと思っています。私が見てきた中でも今年はベストの4年生、だからこそベストなチームになりつつあります」(池内監督)
大切なのはキャプテンとしてのポジティブな姿勢(岡本飛竜)
常に元気あふれるプレーでチームを牽引する岡本は下級生のころはベンチを温める時間も長かったが、昨年から出番が増え、最終学年でチームのリードオフマンとなった。
「心がけているのは常にポジティブな姿勢を見せることです。春のトーナメントでは5位に終わってしまったんですが、そこから切り替えてリーグ優勝を目指して頑張ってきました。あと一歩で優勝を逃してしまったのはすごく悔しいですが、戦いながら手応えを感じたというか、このチームはまだまだ伸びるという自信を得ることができました。特にディフェンスはまだまだできると思っています」
延岡学園時代から7年間ともに戦ってきた岩田には「全幅の信頼を寄せている」と言う。
「あいつは普段は頼りなくて、下級生からもいじられる愛されキャラなんですが、コートに立つとめちゃくちゃ頼もしくなります。別人です(笑)。東海大には延学でチームメイトだったレオ(ベンドラメ礼生)がいますが、あいつはほんとにすごい。自分は小さいので上からバンバン打たれるので、それをなんとかしないと。インカレで目指すのはもちろん優勝だし、そのためにもレオには負けられない。インカレで戦うことがあったら食らいついて、食らいついて、最後は噛みついてやりたい(笑)岩田もきっと同じ気持ちだと思います」
◆まずはインカレ決勝の舞台に立ちたい(岩田大輝)
常に体を張ったプレーでチームに貢献する岩田は2年生の4月に右膝前十字を切る大ケガを負い、手術、リハビリで長期戦線離脱の辛さを味わった。それだけに再びコートに立てたときの喜びは大きく、最後の学年を迎えた今年に賭ける思いは強かったと言う。
「春のトーナメントでは上に行く前に負けて5位に終わり、あらためて一発勝負の怖さを知りました。その分リーグ戦は負けられないという気持ちでしたが、徐々にチームが自信をつけていき、専修大に負けたときも引きずらないで前向きに切り替えられたのはよかったと思います。その身長でよくリバウンドが獲れるなぁとか言われますが、うちはエースのバンバとか岡本にどうしても相手の目が行きますから、その隙を狙ってパッと下に潜り込むんです(笑)。うちはこれまで優勝候補の一角に挙げられていても勝てなくて、いつも3番手とか4番手、インカレで4つに残っても3位決定戦に出て決勝戦を観る…みたいなのが続いていましたから、今年はなんとしてもまずは決勝に行きたいです。最終的な目標は優勝ですが、まずその前に決勝に行くことが自分の目標です。リーグ戦は長丁場なので7人ぐらいで戦ううちは後半戦にどうしても疲れが出てしまい、駒が豊富な東海大との2戦目は大敗となりましたが、インカレは一発勝負の短期決戦なので、うちにも十分勝機はあると思います。東海大を見るとレオはますますすごいなぁと思うし、隙のないチームですが、一桁のビハインドでくっついていけば勝負を覆すチャンスは必ずあると信じています。もちろん敵は東海大だけではなく、筑波大も同じぐらい嫌な相手ですが、リーグ戦を戦って手応えを感じているし、今年は十分優勝を狙えるチームだと思っています」
岩田のことばにもあるよう今回3位に終わった筑波大も個々の能力が高く、インカレの優勝候補に名を連ねることに変わりはない。前大会の覇者としてのプライドを持って臨んでくるのは間違いないだろう。思わぬ番狂わせも珍しくない一発勝負。リーグ戦で得た課題をどう生かしていくのか、各チームのインカレに向けた戦いはすでに始まっている。
[第91回関東大学男子リーグ戦・結果]
優勝 東海大学(3年連続4回目)
準優勝 拓殖大学
3位 筑波大学
4位 青山学院大学
5位 明治大学
6位 専修大学
7位 白鷗大学
8位 慶應義塾大学
9位 法政大学
10位 国士舘大学
[個人賞]
最優秀選手賞 ベンドラメ礼生(東海大4年)
敢闘賞 岡本飛竜(拓殖大4年)
優秀選手賞 頓宮裕人(東海大4年)/伊藤達哉(東海大3年)/ジョフ・チェイカ・アハマド・バンバ(拓殖大3年)/馬場雄大(筑波大2年)/笠井康平(青山学院大4年)
得点王 ジョフ・チェイカ・アハマド・バンバ(拓殖大3年)
リバウンド王 ジョフ・チェイカ・アハマド・バンバ(拓殖大3年)
MIP賞 橋本晃佑(東海大・4年)
3P王 安藤周人(青山学院大3年)
アシスト王 福元直人(慶應義塾大4年)
※第67回全日本大学バスケットボール選手権(インカレ)は11月23日~11月29日に開催。
◆大会公式サイト 全日本大学バスケットボール連盟
http://www.jubf.jp/
◆大会特設サイト 公益財団法人 日本バスケットボール協会
https://intercollege2015.japanbasketball.jp/
追記 2015年11月6日 20時04分
初出時、岡本飛竜選手の名前を間違えて記載しておりました。
誤 飛龍
正 飛竜
読者の皆様、ならびに関係者の皆様に深くお詫びし、ここに訂正をさせていただきます。