「弱くなったと思われないように…」プレッシャーと戦っていた新戦力
前回大会準優勝の埼玉ライオンズ。日本一まであとひとつに迫っていたが、3年半の月日は長かった。メンバーの入れ替えがあり、今年の「天皇杯 第48回日本車いすバスケットボール選手権大会」は優勝したパラ神奈川スポーツクラブと準決勝で対戦し、49-61で敗れた。千葉ホークスとの3位決定戦、第4クォーターは相手に4点しか与えない圧倒的なディフェンスで、66-46と20点差をつけて完勝。戦いを終え、最後の円陣を組んだときに溢れてきたのは、「やっぱり悔しい感情が最初に出てきました」。そう話すのは、ワールドBBCから移籍してきた新戦力の#4 北風大雅である。車いすバスケをはじめてまだ5年ほどだが持ち点4.5、期待のハイポインターだ。同じく、女子日本代表として東京パラリンピックに出場した#20 財満いずみ(1.0)も新たに加わり、大きな戦力となった。
コート内にいる選手の持ち点は、合わせて14点以内で構成しなければならない。男女混合チームが認められる天皇杯では、女子選手が出場すれば1人につき1.5点が合計点にプラスされる。それによってハイポインター3人を同時起用するパワープレーが、埼玉ライオンズの新たな武器となった。しかし、移籍してきた北風にとって、天皇杯までの道のりは順風満帆ではなかった。
「自分は昨年6月から、財満選手は7月から加入しましたが、そこから信頼を勝ち獲るために苦労した部分もあります。2人で手応えを感じながらも、自分たちが入ったことで弱くなったと思われないように……」と振り返る北風は言葉を詰まらせる。見えないプレッシャーが重くのし掛かっていた。準決勝で敗れ、目標としていた優勝には届かなかった。気持ちが落ちてしまう状況も、「せめて3位で終われるように、俺らが入ったことで強くなったと言われるように、財満選手と一緒にがんばりました」と切り替え、ラストゲームを勝利で飾った。