第47回日本車いすバスケットボール選手権大会『天皇杯』が武蔵野の森総合スポーツプラザにて開幕した。健常者も出場可能となった今大会は、波乱の幕開けとなった。
健常選手の加入により、勢力図が変化
大会10連覇中の宮城MAXは、第3クォーターまで49-52とビハインドを背負っていた。相手は8年ぶりに全国の舞台にやってきた伊丹スーパーフェニックス。日本代表の#24村上直広(4.0)が得点源となり、リードを奪う。勝負どころでは、ヘッドコーチを兼任する#15三浦玄(4.5)と#14伊藤壮平(4.5)の2人の健常者を同時起用し、常勝軍団に真っ向勝負。体幹が強い健常者は、車いすバスケの世界ではフィジカルで優る。
しかし、試合巧者の宮城MAXは最後の10分で一気にギアを上げた。絶対的エース#4藤本怜央(4.5)、シューター#9土子大輔(4.0)が次々と得点を挙げ、第4クォーター開始から12点ランで61-52と逆転し、9点差をつける。12点を挙げた女子選手の#30藤井郁美(4.0)も存在感を見せ、終わってみれば75-64で王者が11連覇に一歩近づいた。
「相手は日本代表経験豊富な選手が多く、逆に僕らは若く、メンタル的にまだまだ。その差で負けました。でも、技術では負けていなかったと思います」と村上は胸を張るとともに手応えを感じていた。
2大会連続準優勝、昨年の決勝では延長戦までもつれ込み宮城MAXを苦しめたNO EXCUSE。優勝候補の一角として注目されていた。しかし、ポイントゲッターの#55香西宏昭(3.5)の姿はない。現在、香西は所属するRSVランディルがプレーオフ決勝ラウンドに進み、ドイツでの戦いを選択。「そのことは割り切って、このチームで絶対に優勝するぞ」とキャプテンの#27湯浅剛(1.5)は気合いを込めて試合に入る。
しかし、15-4と序盤から流れをつかんだのは埼玉ライオンズ。これまで持ち点3.0以上のハイポインターは#00篠田匡世(3.5)と#17大館秀雄(4.0)の2人だけ、重度の障がいを持つ選手が多いローポインター軍団だった。しかし、3人の健常者を加えたことで変貌を遂げた。「健常者の中でもドラフト1位のような選手」と日本代表の#11藤澤潔が例えたのは、#12大山伸明(4.5)である。ベンチスタートながら12点、5リバウンド、9アシストをマーク。ウォリアーズと同じく『Strength in Numbers』をスローガンにする埼玉ライオンズは、選手層の厚さとともにバランス良く得点を重ね、72-57で勝利。敗れたNO EXCUSEの湯浅は「15点差で敗れたことが悔しいし、宏昭にも申し訳ない」と涙を見せた。