東京パラリンピックの銀メダルメンバーである豊島英をはじめ、これまでの主力がこぞって引退していった宮城MAX。2019年以来、約4年ぶりに開幕した「天皇杯 第48回日本車いすバスケットボール選手権大会」へ向け、#31 萩野真世は「1からというかゼロからのスタート。12連覇を期待していただいているとは思いますが、そこまでの道のりはすごく長いかな」と弱気だった。
初戦の相手は、宮城MAXが11連覇する以前、3連覇していた古豪・千葉ホークス。開始早々から連続8点を奪われ、さらに2-12と引き離された時点で早くも宮城MAXがタイムアウトを取った。キャプテンであり、この舞台を経験する#55 佐藤裕希や萩野、昨年のU23世界選手権で世界一となった#16 伊藤明伸がチームを引っ張る。しかし、千葉ホークスは#14 池田紘平を中心に、点差を開いて行った。
これまでの宮城MAXは、経験も実績もある選手たちだったがゆえに、コート上からいろんな声が聞こえてきた。「試合に入る前からベンチもコート上も盛り上げていこうという話はしていたんですけど、ちょっとみんなも緊張して最初の入りが悪くなってしましました」と振り返るのは、はじめて天皇杯のコートに立った#13 長峯慎哉だ。健常者の長峯は福島のチームから移籍し、チャンピオンチームのユニフォームを受け継いだ。
シューターであり、千葉ホークスからも警戒されていたが、7本放った3ポイントシュートはいずれもリングに嫌われる。逆に千葉ホークスは池田が23点の活躍を見せ、57-36で勝利し、ダブルヘッダーで行われる準決勝へ駒を進めた。同時に、宮城MAXの連覇が途切れてしまった。
この結果に対し、長峯は「今まで練習してきたことは出せましたが、天皇杯11連覇した先輩方から全く新しいチームとなってはじめて出場した今大会では、うまくいかないことも多く、結構大変でした。正直、かなり悔しいです」という感情が沸いた。
大会前、宮城MAXのOBたちから「連覇のことは気にしなくて良い」と声をかけられプレッシャーはなかった。それ以上に、「自分たちが新しい宮城MAXを見せていこう」という思いの方が強かった。物静かだった前半を終え、徐々にいろんな声がコートから聞こえてくる。「後半は全員が吹っ切れて、いつも通りのプレーできました」と長峯は笑顔を見せ、持てる力を出し切った。はじめての天皇杯は7点に終わった長峯だが、「シュートが好きなので、3ポイントシュートを圧倒的に決めるようにがんばりたい」と力を込める。
新チームの特徴は、「みんなでワイワイしていた方が盛り上がって強くなる。個人の力よりもコートに出る5人の力で強くなっていきたいです」と長峯は話しており、新たな歴史の幕が上がった。ドイツで奮闘中の藤本怜央は、宮城に帰って来たときには必ず練習に参加し、いろんなアドバイスをしてくれた。彼も宮城MAXの一員であることを忘れてはならない。
文・写真 泉誠一