2016年リオデジャネイロパラリンピックから2年の月日が経とうとしている。及川晋平ヘッドコーチが、車いすバスケットボールのスキルである『ベーシック』に注力しながら強化を図ったが、12チーム中9位に終わる。2012年ロンドンパラリンピックと変わらぬ順位だった。
日本がバスケットボールという競技で世界に勝つためには攻守の切り替えを早くし、フルコートを走り回ってスペースを作り、確率の良いシュートを狙う。これはどのカテゴリーでも同じであり、常套手段になっている。リオデジャネイロパラリンピック後、車いすバスケ男子日本代表もトランジションバスケットを取り入れ、同時にフィジカルやメンタルも突き詰めながら強化してきた。
今年6月、三菱電機ワールドチャレンジカップ 2018では全勝優勝を飾り、2年間の成果を早くも結果で示している。2008年北京パラリンピックの金メダリストであるオーストラリアを、2度も破って成し遂げた快挙である。2年前からメンバーの半分が入れ替わり、世代交代した日本代表の集大成となる「車いすバスケットボール 世界選手権」がドイツ・ハンブルグにて、いよいよ8月16日(木)より開幕する(日本戦は8月17日(金)より)。
日頃から世界トップクラスに揉まれる武者修行
リオデジャネイロパラリンピック後、高いレベルに身を投じるべく、#24村上直広選手は#2豊島英選手らとともにドイツリーグのケルン99ersでプレーしてきた。初選出されたリオデジャネイロパラリンピック時は、「みんなについていくことで精一杯だった」。しかし、日頃からフィジカルが強い相手に揉まれながらレベルアップを図ったことで手応えを感じている。
「昨年まではシュートを狙うことしかしていなかった」と言う村上選手だが、そのシュート力を買われて日本代表を勝ち獲った。しかし、それだけでは世界には通用しないことを身をもって感じたからこそ、オフェンスのバリエーションを増やしてきた。
「この1年間でボールをもらってからしっかりピックをかけ、展開してからインサイドを狙ったり、またはミスマッチを突いたり、周りが崩れればそこから広がって得意のシュートを打ち、それとともにいつでも速攻に行けるようになった」
パラリンピックに出場し、ドイツリーグでプレーすることで相手のマークも厳しくなっている。「オーストラリアのティム・ロビンスはドイツでプレーしているので、僕のプレーを知っている。ドイツでも荒いプレーをされ、こっちも感情的にプレーしたことでシュートが乱れて負けてしまった」と日頃から世界トップクラスと対峙できる環境により、その経験を生かしながら国際試合では冷静に対応できるようになった。
苦しい練習を乗り越えてきたことを自信に変え、目標はベスト4以上!
優勝した三菱電機ワールドチャレンジカップ 2018を皮切りに、7月にはイギリスで行われたコンチネンタルクラッシュ2018に参戦。世界選手権直前には、開催国であるドイツにてケルン ネイションズカップに出場し、最終調整を図った。しかし、コンチネンタルクラッシュは1勝4敗、ネイションズカップも1勝(2敗)しかできず、韓国にブザービーターで逆転負けを喫し、あまり流れは良いとは言えない状況である。
ネイションズカップでの村上選手は、敗れた韓国戦こそ3分の出場に終わったが、ドイツ戦とオーストラリア戦はいずれも12点を挙げ、チームの得点源として活躍している。
「昨年から取り組みはじめたロープを振ったりするフィジカルトレーニングは本当にきつくて、練習後は吐きそうになった。でも、今では同じトレーニングをしてもやり切れるし、その後に試合だってできるようになった」
パラリンピックやドイツリーグでの経験とともに、苦しい練習を乗り越えてきたことを自信に変えて世界に挑む。目標は「ベスト4以上」。2014年に行われた前回大会も9位だった。2012年から3度の世界大会はいずれも同じ順位であり、今大会でジャンプアップしなければ目標には届かない。しかし、三菱電機ワールドチャレンジ 2018のようにフルコートを走り回り、強いメンタルを持って立ち向かえば、自ずと結果も伴うはずだ。
開幕戦は8月17日(金)9:30(現地時間)よりイタリアと対戦。メダル獲得を目標に掲げる2020年東京パラリンピックへ向けた布石となるような活躍を期待したい。日本戦はBS日テレにてテレビ放送される。
車いすバスケットボール世界選手権 男子日本代表メンバー
#2 豊島 英(2.0)*
#5 鳥海 連志(2.5)
#6 川原 凜(1.5)
#7 古澤 拓也(3.0)
#10 宮島 徹也(4.0)*
#11 藤澤 潔(2.0)*
#13 藤本 怜央(4.5)*
#24 村上 直広(4.0)*
#25 秋田 啓(3.5)
#26 岩井 孝義(1.0)
#55 香西 宏昭(3.5)*
#92 緋田 高大(1.0)
*はリオデジャネイロパラリンピック出場選手
IWBF 世界選手権 2018
8月16日(木)〜26日(日)
【予選ラウンド】
プールA:モロッコ、カナダ、イラン、ドイツ
プールB:アメリカ、韓国、ポーランド、イギリス
プールC:トルコ、ブラジル、日本、イタリア
プールD:オーストラリア、アルゼンチン、スペイン、オランダ
【日本戦スケジュール】※現地時間
8月17日(金)9:30 日本vsイタリア
8月18日(土)19:45 日本vsトルコ
8月20日(月)10:00 日本vsブラジル
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サントリーチャレンジド・スポーツ プロジェクト
文・写真 泉誠一