昨年、大分ヒートデビルズの早川大史選手がニッポントルネードの門を叩き、オフシーズンに海を渡って行った武者修行をお伝えした(自分と向き合う出稽古:IBL参戦ニッポントルネード/早川大史選手)。そのニッポントルネードが今年もまた、IBL(INTERNATIONAL BASKETBALL LEAGUE)を舞台に、それぞれのレベルアップ、そしてそれぞれが追うチャンスをつかむために日本人チームで挑む。
ニッポントルネードのオーナーであり、ヘッドコーチ、さらにはアメリカ滞在中のコックや運転手など様々な役割で選手をサポートし、そして父親のような存在である西田辰巳さん。今回、ニッポントルネードのユニフォームサプライヤーとなった株式会社UPSETさんを通じ、オーナーである西田さんにお話を伺う機会をいただいた。
ニッポントルネードとはどんなチームであり、そして先にあるものは──。
インタビューを前に、まずは西田さんが掲げるニッポントルネード活動の根底をご紹介しておこう。
「バスケット界最高峰のNBAやWNBAを目指す事は、同時に一人でも多くの国際的な感覚を持つ日本人リーダーを育てることになります。
水、食料、住まい、着るもの・・・など人に必要不可欠な物から考えて、バスケットは何番目なのか?それを考えました。
じっくり、じっくり。
そしてようやく一つの答えにたどり着きました。
バスケットは必要だと・・・
それは人が人として生きていくためのコミュニケーション能力を育成する為にです。
個を尊重し、輪を持って生活をする為にです」(UPSETブログより抜粋)。
ニッポントルネードを通じて、西田さんの壮大なる夢が始まっている。
なるほどな!日本人をプロモーションする一歩としての「IBL」
── ニッポントルネードとはどういう活動をされてるのでしょうか?
西田氏:昨年2月から、バンクーバーボルケーノス(IBL所属チーム)のオーナーと共同で、IBLのオーナーを務めています。IBLは、NBAやDリーグ(NBA下部リーグ)とは違って4〜7月にシーズンを行うため、日本人選手がプロモーションをしたり、経験を積んだり、またプロ選手としてプロテクトされ契約していても、チームの了承さえ得られれば出られる期間に行われます。オフシーズン中に、たとえマイナーリーグでもステップアップできる場として活用できるはずであり、そこにニッポントルネードは参戦します。以前、(アメリカ在住スポーツライターの)宮地(陽子)さんから、「やっぱりDリーグ以上に見てもらうためにも、NCAA Div1はもちろんですが、それなりのプロリーグのスタッツが無いとなかなか見てもらえないんですよね」というお話を聞き、なるほどな!と思ったわけです。IBLはマイナーではありますが、日本人をプロモーションする一歩としては良いリーグです。
今年からドリームセブンという運営会社を作って、そこからニッポントルネードをIBLに参戦させます。また、UPSETさんにユニフォームをサプライヤーしていただいたのをはじめ、いろんな企業にスポンサーとなっていただきながら、チームとしても次のステップに行けるように準備しているところです。今までは自分たちでだいぶお金を使って来ましたが、ようやく5年目にして、僕らがやっている活動を理解してくださる方々が増えて来て、形になってきました。
── ニッポントルネードのチーム方針や志願者で構成されるチームのコーチングコンセプトは?
西田氏:経験値、スピード、スキル、文化の違いなど圧倒的に不利な状態でプレイすることになるので、もちろん勝つことを目標にはしますが前提にはしません。2試合あれば、1試合目よりも2試合目に成長できるような目標を持ってやっています。もう一つ、不利な状態の中で、どうしたら勝てるのかをチームで試していくことです。練習相手にDリーグでも活躍する2m10cmの選手がいましたが、それに対して190cmの福田幹也(埼玉)がマッチアップするよりも、170cmそこそこの中島健太をつけた方が相手も困るわけです。そんな手法を取ったら、相手はフラストレーションをためて3回トラベリングしました。日本人が勝つために、いろんなことを試しています。もちろんスカウティングされて次の試合には対応されることもありますが、いろんな策があることを理解してもらいたいです。日本人としてビハインドであることも、長所として捉えて試すことで通用することも多々あります。
選手たちはみんな、その環境に最初はビビっています。でも、僕は絶対に勝ち気で行きます。それに対する選手たちへの不満が僕にはありました。何のために時間とお金を使ってアメリカまで来たのに、なぜビビってるんだ、と。確かに相手はすごいかもしれません。プロ経験ある選手もいますが、ほとんどが初めての経験をする選手たちばかり。それでも勝ち気でやらせるわけですから、メンタルは強くなります。とにかく厳しくやるわけではなく、この労力をムダにしたくないという気持ちで選手たちは成長していきました。
── 今年はどのようなスケジュールで活動は進んで行くのでしょうか?
西田氏:現在メンバーを募集しており、それが決まればアメリカへ渡り、5月に10試合、6月に10試合を行います。また、6月中にはDリーグのトライアウトがありますので、そこに活躍する選手を選びながら挑戦させるつもりです。このチャンスをつかんで、11月に行われるDリーグのドラフトに名前が呼ばれるようなプロモーションを今シーズンは準備しています。