そのリニューアル一発目のALLDAYは、思いもよらないと言っては失礼だが、あまりにもドラマチックな結末が待っていた。優勝したのはTEAM-S。今回出場したチームの中では最も歴史が長く、第1回から出場し続けているチームだが、しばらく優勝から遠ざかり、これが2007年に2大会連続で制覇して以来実に15年ぶりの戴冠となった。これには秋葉も「すごいタイミングで、出来すぎなくらいのストーリーでしょ」と驚嘆し、MAMUSHIも「ここで一番の古株が獲るんかい、恐ろしいな(笑)」と舌を巻いた。
チームを率いるのは、ALLDAYでは運営にも深く携わっているANちゃん。SOMECITYでも発足から中心的役割を果たしており、ストリートボール界の重鎮ともいえる人物だ。成績が振るわなかったこともあり、近年はALLDAYに関しては「チームでもベスト8を目標にしていた」と証言するが、その一方で何か予感めいたものも感じていたようだ。
「ここで勝つには、そのための練習を相当しないと勝てない。それでそういう練習を3年くらいやってきたかな。それが実になったから、より嬉しいよね。でも、何か巡り合わせもあるなと思いました。最近は他のイベントでは勝ってたし、ツキもあったから、今朝から『これ今日勝つんじゃないか、もしかしたらあるかもな』ってね」
ベスト8という謙虚な目標を立てつつも、今回のリノベーションプロジェクトでも推進チームに加わったANちゃんにとっては思い入れの強いトーナメント。「ALLDAYはめちゃくちゃ特別。一番負けたくない、一番勝ちたいのがALLDAY。だから、ビックリしたけど(笑)、ずっとやってて良かったなって思う」と、感慨もひとしおの様子だった。
ストリートボールの酸いも甘いも見届けてきたMAMUSHIは「ストリートボールってはかなさもあると思うんですよ。チームが良い瞬間はこの1年だけで、来年はそれをキープできないみたいなこともあるんです。でも、そういうはかないのもカッコいいと思いながらも、TEAM-Sみたいに盛り返してくるコミュニティもやっぱすげえなって思う」と語る。記念すべき大会で最古参のTEAM-Sが優勝したことは、先人が築いてきた歴史の重みを雄弁に物語ると同時に、ストリートボールが持つ底力のようなものも感じさせてくれた。新しい扉を開ける節目であっても、その場所が代々木公園のコートである以上、勝者として最もふさわしいチームだったのかもしれない。
文・写真 吉川哲彦