「この3連戦を良いカタチで終えることできた。オセアニア遠征(第4次強化合宿@オーストラリア、ニュージーランド)からチームの成長が目に見えており、強化が上手く行っていると感じている」。女子日本代表を率いる内海知秀ヘッドコーチは、チャイニーズ・タイペイとの3連戦を終えてこう総括した。8月29日(土)から始まる第26回FIBA ASIA女子選手権に向け、チームは順調に仕上がっているようだ。
PHOTO by F.Mikami(国際強化試合2015より)
【オセアニア遠征】
日本 ●65-86〇 オーストラリア
日本 ●64-85〇 オーストラリア
日本 〇76-75● オーストラリア
日本 〇75-58● ニュージーランド
日本 〇93-66● ニュージーランド
日本 〇81-73● ニュージーランド
【国際強化試合2015】
日本 〇92-52● チャイニーズ・タイペイ
日本 〇94-51● チャイニーズ・タイペイ
日本 〇74-33● チャイニーズ・タイペイ
「一番成長した選手は?」との問いに、山本千夏の名を挙げ、本川紗奈生の好調ぶりを喜んだ。チームとしてはもとより、選手一人ひとりの成長を感じているようだった。
「栗原(三佳)ら外角のシューターたちが、少しずつ確率を上げてきているので心強い。あとは、渡嘉敷(来夢)が合流後、彼女たちとのコンビネーションをつくりながら最終調整を行う。時間はあまりないが、その点をしっかりやって大会に臨みたい。渡嘉敷がいない中、国際試合を経験し、結果を残すことができているので“チームとして通用する”ようになってきた」(内海HC)
FIBAの“制裁解除”が正式に決まり、リオデジャネイロオリンピック予選(FIBA ASIA選手権)への出場が叶った“ハヤブサジャパン”。女子日本代表は大会連覇とともにオリンピック出場への期待が大きい。最終調整となる実戦が「日本代表国際強化試合2015」であり、国内で多くのファンの前でプレイする絶好の機会。観戦に訪れたファンの目にも頼もしく映る女子日本代表の活躍が光った。
軸となるセンターライン。
ウィングがプラスαの力。
内海HCが名前を挙げた本川は持ち前のスピードとアグレッシブなドライブで何度もチャンスを演出。ロングパスを受け、躊躇なくゴールに向かう強気のプレイはチーム全体にスピード感を生み、攻守の良いリズムにつながった。
「ひるまず行くことを考えてプレイしました。その動きを求められていると思っていますから、常に万全にコンディションで臨めるよう心掛けています。オリンピックに出ることが夢でしたし、まずはA代表に入ることが目標だったので、あとはひたむきに頑張るだけ。(オセアニア遠征から)スタートで起用されていますが、自分の気持ちの中でも、“スタート出て貢献したい”という気持ちは強かったので心構えはできていました」(本川)
「今回、機動力を活かせる選手をピックアップしました。外角からの攻撃やドライブなど、3ポイントの点数が少ない試合が続いたが、本番に向けてはここ数試合の戦い方に加えて、3ポイントの確率が上がって来ると、またプラスαの力が出ると思っています」(内海HC)
その3ポイントで言えば、チャイニーズ・タイペイとの第1戦、栗原が素晴らしい活躍を見せた。16分40秒のプレイタイムで5/7の高確率で3ポイントを決め、トータル17 得点でスコアリーダーに。3試合合計でも8/16と積極的にシュートを狙った。
「皆で話し合いながら、互いのミスをカバーし合いながら頑張れたのが収穫でした。『走るところで走る』『決めるべきシュートを決める』そういう基本的なところをもう一度確認し、修正してFIBA ASIA選手権に臨みたいと思います」(栗原)。それぞれが自分の役割を理解し、チームとして精度を上げて行く。大事な大会を前に、意思統一も図られているようだ。
もう一人、山本もクイックモーションからの3ポイントシュートやディフェンスの隙を突くドライブなど、安定感のあるプレイを披露。ベンチスタートであっても高い得点力を発揮できるのが持ち味であり、これが今の女子日本代表の強さを証明している。スターターとベンチプレイヤーは、持ち味こそ違えど実力的に遜色はなく、チームとして攻守ともにバリエーションが豊富なので観ていて楽しい。もちろん、ファンの期待に応えるべく結果を追求するメンタルも強く、チーム一丸となって戦う姿勢が伝わってくる。
期待>不安。渡嘉敷、町田の成長
「渡嘉敷が戻ってからの練習は回数にして7~8回。これまでやって来たこのチームのシステムを理解してもらうことが第一だが、彼女はバスケIQが高いので、すぐに順応してくれるはず。インサイドのプレイだけでなく、高さに加えて運動能力も優れているので、彼女の走りにも期待しています。我々が目指すのは速いバスケットですから」(内海HC)
「町田もそうですが、オセアニア遠征を含めて、彼女らしさが出てきました。ゲームメイクも持ち味を発揮できたので、チームとしての成長の中で各個人も成長できていると思う」(内海HC)
直前の合流となる渡嘉敷や吉田のバックアップとなる町田について質問を受けた内海HCの答えだ。不安視される点はまだまだあるだろう。しかし、内海HCに限らず、選手たちは落ち着いた表情で受け答えをし、気負いは感じられない。連覇とオリンピック出場が懸かる大会であり、中国開催という完全アウェーでの戦いを強いられるものの、自信を持って臨もうとする気概が感じられる。
「このチームの強みは走り切れること。ウィングもそうですし、センター陣も相手を振り切れる走力があります。アップテンポの展開に持ち込んで、走るバスケットで勝機を見出したいと思います。川淵(三郎)会長はじめ、多くの関係者の努力があっての“制裁解除”だと思いますので、感謝の気持ちでいっぱいです。大会前、国内で多くのファンの皆さんにこのような結果(3連勝)をお見せすることができ、とても嬉しかったです」。キャプテンを務める吉田は感謝の言葉と国際大会でプレイできる喜びを表現した。きりっと引き締まった表情の吉田は持ち前のキャプテンシーでチームを頂点へと牽引する。
今週末から始まる『第26回FIBA ASIA女子選手権』。合宿や海外遠征を重ねて強化に努めてきた“ハヤブサジャパン”がさらなる飛躍を誓う舞台だ。最後の最後、わずか数パーセントでも彼女たちのサポートになるのはファンの後押し、応援の力。“ガンバレ! ニッポン!! ” “ガンバレ、ハヤブサジャパン”その声はきっと届くはずだ。
大会特設サイト ⇒ http://fac_women2015.japanbasketball.jp/
【第26回FIBA ASIA女子選手権大会 ハヤブサジャパン 女子日本代表選手】
■チームスタッフ
チームリーダー 高橋 雅弘(公益財団法人日本バスケットボール協会)
ヘッドコーチ 内海 知秀(公益財団法人日本バスケットボール協会)
コーチ 梅嵜 英毅(山梨学院大学)
コーチ トム・ホーバス(JX-ENEOSサンフラワーズ)
総括 庄子 梢枝(公益財団法人日本バスケットボール協会)
トレーナー 伊藤 由美子(公益財団法人日本バスケットボール協会)
マネージャー 山﨑 舞子(JX-ENEOSサンフラワーズ)
■サポートスタッフ
ドクター 武田 秀樹(東芝病院)
S&Cコーチ 窪田 邦彦(合同会社ベストコンディションKJ)
トレーナー 古澤 美香(株式会社リニアート)
マネージャー 三浦 絵理(トヨタ自動車 アンテロープス)
テクニカルスタッフ 尺野 将太(公益財団法人日本バスケットボール協会)
テクニカルスタッフ 望月 麻希子(公益財団法人日本バスケットボール協会)
■選手
#4 三谷 藍(富士通 レッドウェーブ)
#5 宮澤 夕貴(JX-ENEOSサンフラワーズ)
#6 間宮 佑圭(JX-ENEOSサンフラワーズ)
#7 栗原 三佳(トヨタ自動車 アンテロープス)
#8 髙田 真希(デンソー アイリス)
#9 山本 千夏(富士通 レッドウェーブ)
#10 渡嘉敷 来夢(シアトル・ストーム/JX-ENEOSサンフラワーズ)
#11 篠崎 澪(富士通 レッドウェーブ)
#12 吉田 亜沙美(JX-ENEOSサンフラワーズ)
#13 町田 瑠唯(富士通 レッドウェーブ)
#14 本川 紗奈生(シャンソン化粧品 シャンソンVマジック)
#15 王 新朝喜(三菱電機 コアラーズ)
※所属は2015(H27)年8月21日現在
■大会概要
大会名:第26回FIBA ASIA女子バスケットボール選手権大会
(兼 2016年リオデジャネイロオリンピック アジア地区予選)
期 日:2015(H27)年8月29日(土)~9月5日(土)
開催地:中国・武漢
会 場:武漢スポーツセンター
出場チーム:
レベルⅠ:日本、韓国、中国、チャイニーズ・タイペイ、インド、タイ
レベルⅡ:朝鮮民主主義人民共和国、ホンコン・チャイナ、カザフスタン、マレーシア、フィリピン、スリランカ
※今大会の優勝チーム(レベルⅠ)には「第31回オリンピック競技大会(2016年・リオデジャネイロ)」の出場権が与えられる。2位および3位チーム(レベルⅠ)には「FIBA女子オリンピック世界最終予選(2016年・開催地未定)」の出場権が与えられる。