シーズン中に、BリーグとWリーグのコラボで血縁関係をクローズアップしたSNS企画があった。父・忠晴氏がWリーグ・アイシンでコーチを務める小川も、当然ながらこの企画に登場し、父との良い関係性を窺わせた。父も日本代表でプレーした経験を持つ中、息子・敦也も、「小さい頃から目標にしてたので、それを考えて今まで行動して、進路も選択してきたし、父も望んでることだと思います」と代表入りへの想いを語る。その父の期待に応えたいという気持ちは、やはり良いモチベーションだ。
「自分が小さいときから選手、コーチをしてきて、その姿は小さいながらもかすかに覚えてますし、今でも一番応援してくれる立場。アドバイスもたくさんくれるので、活躍して恩返ししたい気持ちはありますね」
父の日本代表での経験談はあまり聞かされたことがないそうだが、自身のコメントにもあるように、アドバイスを受けることは多いという。身体能力の高さは父譲りだが、父はいわゆるバスケットIQも高い選手だった。まだ若い小川にとって、父から受ける薫陶は司令塔として参考になる部分が相当にあるはずだ。
「ポイントガードなので、自分がシュートを打つところと周りを生かすところの判断の話はよくされます。ポジションは違いますが、経験はありますし、コーチもしているので、第三者から見た意見を言ってくれるのはすごくためになります。試合を見てフィードバックしてくれる、その繰り返しで、アドバイスを元に少しずつ良くなっていってると思います」
今回のキャンプに関しては「一つでも多くのことを吸収して、学んで、自分の今後に生かそうと思って臨んでます。オリンピックも目指しながら、でも先は続くので、代表に残れても残れなくても自分の経験になればと思ってます」と、自身の成長の機会と受け止めている。宇都宮のチームメートでもある憧れの比江島慎を含め、主力組が合流する第2次合宿のメンバーに入ることはできなかったが、「行うこと全てが世界を想定したプレー」というトム・ホーバスHCの練習を体感し、また一回り大きくなった姿を披露してくれるだろう。
小川は、現役時代の父がちょうど現在の新潟アルビレックスBBに移籍した頃に、この世に生を受けた。新潟の地は母の故郷であると同時に自身の出身地でもあるが、昨シーズン、宇都宮の特別指定選手となって初めてベンチ登録され、実際に試合にも出場したのが新潟とのアウェー戦だった。デビュー戦の地が新潟だったことについては、「感慨深かったですし、新潟で生まれて中学まで育ったので、知り合いとか中学時代の恩師の方も見に来てくださって、プレーしてるところを見せられて良かったです」と心に響くものがあったようだ。少しだけ早く始まったプロキャリアは、父を筆頭に様々な人の支えを受けながら、一歩ずつ足跡を刻んでいく。
文・写真 吉川哲彦