伝え継がれていく日本の戦い方
とはいえ、世界の強豪国と互角に渡り合うことはけっして容易ではない。そのことは吉田自身が誰よりもわかっている。その過程の苦しみさえ、思い出せば気が滅入ることもあっただろう。それでも自らを奮い立たせ、必要であれば、特に若いチームメイトたちの意識を引き上げることもしなければいけない。
「もっとコミュニケーションがあってもいいのかなとは思います」
紅白戦で自らのいるチームホワイトが72-63で勝ったあと、チーム全体について、吉田はそんな感想を述べている。
「今日は自分のいたチームがリードしたけど、相手チームを引っ張っていく人、喝を入れる人がいると、またチームの雰囲気などもゲームのなかで変わってくると思います。そういうところは日本代表では絶対に求められることだから、年下だからといって遠慮して声を出しにくい雰囲気は作りたくないし、そうした雰囲気作りは必要になってくるかなと思います。あとは、プレーの中でもっとアイディア出しながらやることも、まだまだ物足りないかなって思います」
強化合宿に入って4日目。紅白戦も通常より短い8分のクォーター制だったが、少ない時間のなかでもチームとしての課題を見出せるところに、恩塚亨ヘッドコーチが吉田を招集した意味があるのかもしれない。
加えて、冒頭に記したベテランプレーヤーとしての妙味もさることながら、世界で勝つことの難しさや喜び、負けることの悔しさを味わってきた吉田だからこその、WOQTで担う役割はけっして小さくない。
「今日の紅白戦のように点差がジワジワと離されてきたときにどう立て直すかだと思うし、スペインなどの強豪国とやったときに、ズルズル離されてしまうことは絶対にやってはいけないこと。そこで1度、流れを断ち切れる人が必要になってくるし、それをガードが言うのか、それともベテランの選手が言うのかもチームを作っていく上で必要だけど、それだけでなく、いろんなところから声がかかってもいいんじゃないかなとは思いました」
リオデジャネイロ2016オリンピック以降、そうしたことは髙田真希や林咲希らが担ってきた。彼女たちのキャプテンシーも素晴らしいものがある。そこに吉田が加わることになれば ── たとえ彼女が最終メンバーに残らなかったとしても、その過程に吉田がいることは ── 女子日本代表の今にも、未来にも、大きな財産になるはずである。
文・写真 三上太