日本代表に帰ってきた “流(リュウ)”
吉田亜沙美に目を奪われるのは、けっして髪の毛の色だけではない。
2度の現役引退と、同じ数の現役復帰。それを経てもなお彼女のプレーから陰りのようなものは見えない。
むろん若いころのような勢いや猛々しさは望むべくもない。しかし、そもそも、そんな勢いなど不要だったとばかりに、吉田は自らのプレーを繰り出していく。適切なポジショニング、事前の状況把握から生まれる的確な判断、そこに緩急をつけた相手との駆け引きを織り交ぜて、チャンスを作り出す。
1月14日に高崎アリーナでおこなわれた「WリーグSUPERGAMES ~To the World~」。そこで2月8日から始まるオリンピック世界最終予選(以下、WOQT)の壮行会を兼ねた女子日本代表の紅白戦がおこなわれた。吉田はチームホワイトのメンバーとしてプレーし、ベンチスタートながらも抜群の存在感を示していた。
「今の私の役割は2~3分出て、チームの流れを変えるところだと思うので、その2~3分の中で自分のパフォーマンスがどれだけできるかだし、その体力作りをこれからもっとやっていかなきゃいけないなっていうところは課題として残ったかなと思います。(WOQTに向けては)ディフェンスで前からアグレッシブに当たって攻めていくことがチームとしてのカギになってくると思うので、そこをこれからの日々の練習で積み上げていければなと思っています」
自分を褒めるタイプではない。むしろ課題を見つけながら、それをクリアしていくことで、自分の、あるいは自分たちの目指すところに到達する。それが吉田のマインドである。WOQTではパリ2024オリンピックの出場権を獲得することが最優先課題だが、それさえも「(パリ2024)オリンピックで金メダルを獲るための通過点にすぎない」と言うのは、いかにも吉田らしい。
東京2020オリンピックの出場も目指していた。最初の現役復帰を果たし、2020年2月にベルギーでおこなわれたWOQT(日本は開催国としてオリンピックの出場権を得ていたが、ルール上WOQTに参加することが求められていた)にも出場し、チームの勝利に貢献している。しかし新型コロナウィルスの影響でオリンピックそのものが1年延期となり、その出場を断念、2度目の引退を決意している。
その4年前、女子日本代表としては3大会ぶりの出場となったリオデジャネイロ2016オリンピックにはキャプテンとして出場し、8位入賞。しかし予選グループのオーストラリア戦で逆転負けを喫したことが引き金となり、準々決勝で、優勝するアメリカと対戦することになった。その悔しさは、4年後(正確には5年後)に後輩たちが銀メダルを獲得するという偉業と相まって、彼女をもう一度、チャンスを与えられるのであれば、世界を目指そうという気持ちに駆り立てたのだろう。