川井麻衣が初めて日本代表候補に選ばれたのは2019年のことだった。直前のシーズンで当時在籍していた三菱電機がWリーグファイナルに進出したこともあり、本人は「チームが良かったので、それを代表して私が呼んでいただいたっていう印象だったんですよ」とのこと。23歳だった当時を「三菱電機のチームのバスケットの中で引っ張れただけで、個で良かったかと言われたら正直自信はなくて、全然力不足だったなと思います」と振り返ったのは、それから4年が経った今年5月、再び代表合宿に呼ばれたときのことだ。その間にトヨタ自動車に移籍し、Wリーグ連覇にも貢献したことを考えると、久しぶりの代表候補選出というのは意外な気もするが、その分川井は自身の成長に確信を持っている。トヨタ自動車は3連覇を逃し、川井も悔しい思いをしたものの、個人としてはさらに一皮むけ、バスケットの楽しさを思い返すこともできたシーズンだった。
「今年はトヨタで連覇をかけてチームを背負ってきて、自信もつきましたし、シュートもパスもディフェンスも満遍なくできるようになったことを評価していただけたのかなと思うので、ここ(代表)にきてもやることは変わらなくていいのかなと思ってます」
結果的にはその代表合宿で生き残ることはできず、FIBAアジアカップ2023に出場することは叶わなかった。しかし、Wリーグの新シーズン開幕前に開催される第19回アジア競技大会を控えた代表合宿に追加招集。町田瑠唯(富士通)の離脱に伴うもので、今回は候補ではなく12名のロスター入りが確定した状態での合流だ。
「5月のときは選考ということもあって、結構切羽詰まるような雰囲気もあったんですけど、今回は町田選手の代わりで来た分、自分の中では吹っ切れたようなところがあって、自分の力を出しきろうっていうメンタルになってます。アジアカップにも出てないですし、遅れて合流したので、最初は覚えることもたくさんあって、間違えずにやろうというのがあったんですけど、ここ2日くらいは自分らしいプレーも出せるようになってきて楽しいです」
アジアカップの前に代表候補から外れた時点では、当然ながらWリーグの開幕にフォーカスしていた。トヨタ自動車はWリーグ代表として韓国での大会に参加し、直後のWリーグオータムカップでは多数のコンディション不良者を出して最終日の試合を辞退するという厳しい状況に追い込まれていたが、川井は今回の緊急招集に関してチームスタッフとも話し合いをした上で、快く送り出してもらったということだ。
「私はチームのことを心配したんですけど、『選手はみんなそうやって自分の結果を求めてやっていくんだから、チームのほうは気にしなくていい』ってスタッフから言われました。チームのみんなを信じて、代表でステップアップして帰って、場所は違えどトヨタの力になればと思います。
代表に入ると自分自身の考え方やプレーの幅も広がってくると思いますし、何より刺激になって、その経験が自分のチームにとってもプラスになる。トヨタは毎年代表選手がいて、そうやってチームを作っているというところもあるので、私もそのピースの1つになれたのは良いことだし、それをチームに還元できたらなと思ってます」