ホーバス自身も、若手や初召集の選手たちが、彼らのパフォーマンスを発揮していることについて、こう言及した。
「選手は一人ひとり、みんな違うじゃないですか。例えば(渡邊)飛勇の力をよく使いたいと考えたとき、彼の力はリバウンドとアップダウンを走ることでしょう? でも彼は2年間あまり試合をしていなかったから、『あなたの仕事はこれとこれです。これとこれをしっかりやってくれたら最高です』と伝えるんです。ジョシュはもうメインの選手で、パッシングも、シュートも、ドライブも、いろいろできるから、今週はすごく会話をしました。しかもその会話は僕からだけじゃないんです。彼からも練習中に『コーチ、僕はもうエルボーからのプレーが好きです。そこからプレーしても大丈夫ですか?』と。そういうコミュニケーションがあったことが良かったんだと思います。みんな、違う。だから私も選手たちを一人ひとり見て、ちょっと迷っているなと思ったら……迷っているといいバスケットができないから、迷っている選手たちにはシンプルに『あなたはこれをやってください』です。迷わないと、彼らはできるんです」
ホーバスは自らの目で選んだ選手たちを信じているのである。
それはまた自分自身を信じていることでもある。
イラン戦も不安がなかったわけではない。
「当たり前だけど、試合の前には全員がうまくできるかどうかわからないです。それは一番不安だったんですよ。『ああ、経験のある選手と新しい選手のギャップが大きいかもしれないな……』と。だから、もうちょっと練習したかったんですけど、よくできた。全員、よくできましたね」
彼らが日本代表のシステムや考え方、ホーバスの哲学を理解できていなければ、イランを相手にこのようなゲームはできていなかった。
それらの理解を短期間で進めた彼らのバスケットIQも素晴らしい。
一方でそれを理解してもらおうと、試合前にも関わらず5対5よりも5対0の練習 ── ディフェンスをつけずにオフェンスの動きを5人だけで行う練習 ── に時間を割いたホーバスの緻密で、粘り強いチーム作りが選手たちを躍動させたのである。
そんなことはコーチにとって当たり前で、誰もがやっていることなのかもしれない。
お互いが理解し合うことでチームの信頼は生まれ、同時にベテランと若手に関わりなく、選手個々がそれぞれの持ち味を発揮できるチームワークへと昇華していく。
それをどんなときでも忘れないホーバスが作るチームは、やはり、見ていておもしろい。
文 三上太
写真 FIBA.com