負ければ、誰もが悔しさと反省の言葉を口にする。
もちろんけっしておかしなことではない。
なかには涙を流しながら、悔しさや不甲斐なさを吐露する選手もいる。
ただ、大事なのは、いつだって、これからだ。
悔しさも、不甲斐なさも、反省だって、ひっくるめてワールドカップである。
安間志織が無念の表情を浮かべ、オコエ桃仁花は涙を流した。
恩塚亨ヘッドコーチもいつもどおり冷静に、言葉を選びながら、そのとき考えられて、話せるすべてを語ってくれた。
それをここでなぞるのはやめようと思う。
同じことを繰り返すより、ふとしたときのこぼれ話を紹介しておきたい。
安間はこのあと一度日本に帰ってからイタリアに向かうことになるそうだ。
彼女は今シーズン、イタリアのプロリーグでプレーをする。
そのためにはビザを取得しなければいけないらしい。
イタリアでは週に1回の国内リーグと、それとは別にヨーロッパの各国のチームと対戦するユーロカップの試合もある。
「そこにはフランス代表の選手などもいるんですよ」
今大会での自分の不出来さを悔いた安間だからこそ、昨年までプレーしたドイツとは異なる、より高いレベルでの戦いを心待ちにしている。
ワールドカップはこれからの彼女に、とてもよい課題を突き付けたのである。
オコエは、前日すでにグループフェイズでの敗退が決まっていたこともあり、きょうのオーストラリア戦は「消化試合」だと言った。
もちろん前向きな言葉 ── 「最後は消化試合だったんですけど、日本のために、日本でバスケをやっている子どもたちのために、私たちが先頭に立って戦わなきゃいけないと思って、最後までシュートも、ドライブも積極的にいきました」 ── からの引用である。
勝っても、負けても、結果には影響を及ぼすことのない消化試合。
元来ポジティブな使われ方はしないのだけど、だからこそ、つい、言葉遊びをしてみたくなる。
「ショウカジアイ」を「昇華試合」と書いてみたらどうだろう。
そんな言葉はない。
ただ、すべての敗戦を、いや、勝った試合ですら、さらなる高みへと飛躍させる、つまり昇華させる試合だと捉えることができれば、今回のワールドカップもけっして悪いものではなくなる。
もちろん、それらはすべて、これからの彼女たちにかかっている。
あのダブルレインボーはそのことを気づかせてくれたのだろう。
FIBA女子ワールドカップ2022「G’Day Straya!!」
5日目 星取り勘定では見えない光景
6日目 はじまりはいつも雨
8日目 老いも若きも世界を駆け巡る
文 三上太
写真 FIBA.com、三上太