たとえば平下愛佳である。
9得点しかとっていない。
沈めた3ポイントシュートも1本だけ。
大会が始まる前に「世界一のシューターになる」と誓ったシューティングガードは、その成功率だけを見れば、目標から程遠いところにあると言わざるを得ない。
ブロックも2度されている。
それでも、彼女は少ないチャンスを見つけて、シュートを打ち続けた。
「打てたシュートは良かったかなと思うんですけど、ブロックされたシュートはやはり間合いが日本人と違っていて、離れていても届くというか……自分では打てるかなと思ってブロックされたシュートが何本かあったので、それは勉強になったと思います。世界と戦うにはそういうことがあるんだなって一つずつ学べればいいかなと思います」
学ぶために来たわけではない。
悔しさだって残る。
その悔しさからどう立ち上がるのか。
それこそが今大会を通じて、チーム最年少の彼女が得るべきことだろう。
初めからすべてがうまくいく選手など、どこにもいないのだから。
それは、件のカメラマンが撮影したバレーボールプレーヤーの娘も同じこと。
彼女 ── 山本 ── はきょう、約10分しかプレーしていない。
得意の3ポイントシュートはこの日もネットを揺らさず、得点も5点に終わっている。
それどころかカナダのディナイに苦しみ、ゲームコントロールさえもままならなかった。
むろんそれは山本だけでなく、彼女を除く2人のポイントガードにも言えることである。
それが、日本のオフェンスが停滞した原因のひとつでもある。
しかしそれは、諸外国の日本に対する評価であり、脅威の裏付けともいえるのではないか。
それは山本自身も認めている。
認めつつ、それを越えなければならないと言う。
「ポイントガードをディナイするのは、相手が日本のバスケットを止める一番のアジャストだと思うので、そういうときに自分もボールをもらいに行くタイミングだったり、たとえ自分がボールを持てなくてもみんなに安心感を与えられるような声かけができたらいいなって思います」
映像を見ただけではわからないこともある。
コートの上でそれを素早く察知し、いち早く対応していく。
それこそが「世界一のアジリティ」につながるはずだ。
日本の末っ子と、そのすぐ上の姉が目の当たりにしたカナダとの試合は、彼女たちがこれから世界で戦っていくために通らなければならなかった道だった。
フランスを率いる父も、オーストラリアで復帰した母も、いつか、どこかで通ったはずの道である。
ここで下を向くには、彼女たちはあまりに若すぎる。
FIBA女子ワールドカップ2022「G’Day Straya!!」
3日目 私たちはいつだって昨日を越えていく
4日目 父も、母も、そして娘だって懸命に咲いている
5日目 星取り勘定では見えない光景
文 三上太
写真 FIBA.com