それが第4クォーターのラスト5秒、セルビアがタイムアウトを取ったときに、日本も2人の選手を入れ替えた場面に投影されている。
セルビアの狙いを、得失点差を広げるために得点を取りに来ると予測した恩塚ヘッドコーチは、赤穂ひまわりと渡嘉敷来夢をコートに送り込んでいる。
その渡嘉敷が、セルビアのラストショットをブロックするのだ。
実際のスタッツ上はブロックになっていない。
しかし改めて映像を見ると、彼女の指先にボールが当たっているようだった。
恩塚ヘッドコーチはまた、それについても言及している。
「ああいうことのプレーを大切にしようねと。今までは2~3分でバトンを繋ぐという話だったんですけど、そうではなく、数秒であったり、ワンプレーであったとしてもチームのバトンを握って戦っているんだというのを彼女は示してくれたかなと思っていますし、(今後も)そういうマインドで戦いたいなと思っています」
敗れはしたが、それを単なる一敗にしようとしないところに、アメリカに敗れた中国同様、楽しみはある。
そうこうしているうちに、きょうの第2試合、ボスニア・ヘルツェゴビナ対韓国のティップオフまであとわずかとなった。
大阪でおこなわれたワールドカップ世界予選で日本を破ったボスニア・ヘルツェゴビナだが、今大会はこれまで2連敗と精彩を欠いている。
一方の韓国もまた、かつてのような駆け引きの妙、精度の高いシュートが鳴りを潜めて、目下2連敗。
先に初勝利を挙げるのはどちらだろうか。
結果は、韓国<99-66>ボスニア・ヘルツェゴビナ
2月の大阪で日本を苦しめ、その後も9月18日までWNBAのファイナルを戦ってきたジョーンズは、韓国の執拗なボディチェックに苦しめられていた。
チームメイトとのコンビネーションが合わないことも、彼女のフラストレーションをさらに募らせた要因だったかもしれない。
しかしそれをさせた韓国のディフェンスを、きょうは賞賛すべきだろう。
おそらく彼女たちはこの試合をひとつのターゲットにしていたはずだ。ジョーンズへのディフェンスは、3人のセンター陣が代わる代わる体を当て続けた。
ときにはダブルチームも仕掛けて、ジョーンズからボールを手放させた。
そんな状況だから、オールラウンダーでもあるジョーンズは3ポイントシュートも気持ちよく打てなかった。
一方のオフェンスでは主軸の3人 ── キム・ダンビ、パク・ヘジン、そしてカン・イスルがそろって2桁得点を挙げて、“妹” たちを引っ張った。
なかでもカンは3ポイントシュート7本を含む37得点をあげている。
町田瑠唯と同じくWNBAのワシントン・ミスティックスからオファーを受けた韓国のシューター。
ミスティックスではロスター入りを逃すのだが、自国のワールドカップ決勝トーナメント進出に向けて、その力を誇示してみせた。
どんな結果になろうとも、それをそのままにしないからこそ、連戦が続くワールドカップは見ごたえがある。
昨日までの私と、きょうの私は違う。
明日はもっと違う私になれる。
そう信じて疑わない選手たちが集う。
それが女子バスケットボールのワールドカップである。
FIBA女子ワールドカップ2022「G’Day Straya!!」
2日目 動き出した若者たちの未来(ワールドカップ)
3日目 私たちはいつだって昨日を越えていく
4日目 父も、母も、そして娘だって懸命に咲いている
文 三上太
写真 FIBA.com