コートでは次の試合のオープニングセレモニーのリハーサルがおこなわれている。
当該国の国旗を掲げる子どもたちはその掲げ方を、選手たちの前に並ぶ子どもたちは入り方から立ち位置までをレクチャーされている。
かと思えば、ボスニア・ヘルツェゴビナのエース、ジョンクェル・ジョーンズが誰よりも早くコートにやってきて、シューティングを始めている。
大会3日目となる9月24日は予選グループBが休息日。
日本戦もない。
それでもアリーナに来たのは、もちろん練習後の日本を取材できるからでもあるが、やはりアメリカと中国の一戦を見たいと思ったからである。
両国は予選グループAで2連勝をしているチームでもあった。
結果は77-63。
アメリカが3勝目をあげた。
アメリカは思うようにシュートが決まらなかったが、要所でディフェンスのギアを引き上げる強さがある。
昨夜、チームに合流したエイジャ・ウィルソンは、ベンチスタートで20得点・8リバウンドの結果を出して「プレーヤー・オブ・ザ・ゲーム」に選ばれていた。
コンビネーションはもうひとつだったが、それは大会を通じて合わせていくのだろう。
一方の中国もWNBAでプレーするハン・シューを軸に、ガードのワン・シユー、フォワードのリ・モンが得点を重ねた。
アメリカに迫るシーンも何度かあったが、その壁を越えることはできなかった。
それでも見ごたえのある試合だったことは間違いない。
7割以上が中国人ではないかと思えるほど、「中国隊!」「加油!」の大声援が響いたシドニースーパードーム。
突き離されそうになりながら、中国は最後まで崩れなかった。
むしろ、試合後に多くのファンに向けられた彼女たちの表情はどこか晴れやかでさえあった。
私たちはきょう、やることをやった。
あとは決勝トーナメントで乗り越えるだけだわ、といわんばかりである。
これまでの試合を今後につなげていくのは、もちろん、日本も同じこと。
シューティングのあとに囲み取材に応じた恩塚亨ヘッドコーチは、選手の起用についての方針変更を告げた。
いや、方針変更というのは少し大げさすぎる。
最適解への調整といったほうがいい。
理想としては40分を12人で均していきたい。
しかし、今後はもう少し調子のよい選手に長く走ってもらう。
恩塚ヘッドコーチはそう言うのである。
「理想を追い続けたけど結果が出ませんでした、というのでは本末転倒なので、やはり勝利という結果から逆算して、最善の選択をしていこうと考えています」
そうなれば、プレータイムの長短はおのずと出てくる。
だが、それの少ない選手がダメな選手というわけではない。
それについても恩塚ヘッドコーチは言及している。
「それは『あなたが良くないんじゃなくて、いい人を今走らせてるんだよ』という気持ちでバトンを繋いでいく必要があるなと考えています」
実を言えば、敗れたセルビア戦でも、そうした考えで起用に手を加えていた。